肺ムコール症
概要
肺ムコール症はムコール目真菌による侵襲性肺感染症で、免疫抑制状態の患者に多発する。進行が極めて急速で、致死率が高いことが特徴である。早期診断と治療介入が生命予後を大きく左右する。
要点
- 免疫不全者に多い侵襲性真菌症
- 急速な進行と高い致死率
- 早期診断・治療が予後改善の鍵
病態・原因
ムコール目真菌(主にRhizopus, Mucor属など)が吸入により肺に感染し、血管侵襲性を示す。糖尿病性ケトアシドーシスや造血幹細胞移植後、長期ステロイド投与などの免疫抑制状態が主なリスク因子である。
主症状・身体所見
発熱、咳嗽、喀血、呼吸困難など非特異的な呼吸器症状が多い。進行例では急速な呼吸不全、血痰や胸痛、肺壊死による空洞形成もみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部CT | 結節・浸潤影・空洞形成 | Halo signやair-crescent signが参考所見 |
| 病理組織 | 広い無隔壁性菌糸 | 血管内侵襲像が診断的 |
| 真菌培養 | ムコール目真菌の検出 | 培養は感度が低い |
確定診断には組織生検による真菌形態の確認が重要。画像所見は非特異的だが、急速進行や血管侵襲像が疑いの根拠となる。
治療
- 第一選択:リポソーマルアムホテリシンB静注
- 補助療法:外科的デブリドマン、免疫状態の改善
- 注意点:アゾール系(ボリコナゾール)は無効、治療遅延は致死的
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 侵襲性肺アスペルギルス症 | 菌糸が細く分岐角が鋭角 | ガラクトマンナン抗原陽性、菌糸形態 |
| 肺クリプトコッカス症 | 結節性陰影・髄膜炎合併 | India ink染色陽性、莢膜の有無 |
| 細菌性肺炎 | 急性発症・膿性痰 | 細菌培養陽性、真菌所見なし |
補足事項
糖尿病ケトアシドーシスや鉄過剰状態は特に注意。治療抵抗性や再発例では外科的切除も検討される。近年、免疫抑制患者の増加により発症が増加傾向。