疫痢
概要
疫痢は主に志賀菌(Shigella属)によって引き起こされる急性の細菌性腸炎であり、特に乳幼児や高齢者で重症化しやすい。糞口感染を介して流行し、激しい下痢や発熱、腹痛を特徴とする。
要点
- 志賀菌による細菌性腸炎で感染力が非常に強い
- 臨床的には発熱・粘血便・激しい腹痛が特徴
- 重症例では脱水やけいれん、溶血性尿毒症症候群に注意
病態・原因
主な原因はShigella属細菌で、極めて少量の菌量でも発症する。糞口感染が主経路であり、集団生活や衛生環境の悪い地域で流行しやすい。菌は腸管上皮に侵入し、炎症や潰瘍形成を引き起こす。
主症状・身体所見
突然の発熱、下痢(しばしば粘血便)、腹痛、しぶり腹が典型的である。重症例では脱水、意識障害、けいれん、まれに溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併することがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 便培養 | Shigella属の検出 | 診断の確定に必須 |
| 血液検査 | 白血球増多、CRP上昇など | 重症度や合併症評価 |
| 便検査 | 白血球・赤血球の混入 | 細菌性腸炎を示唆 |
便培養で志賀菌が検出されることで診断が確定する。臨床的には粘血便やしぶり腹の存在が特徴的であり、他の細菌性腸炎との鑑別に役立つ。重症例では腎機能障害や溶血所見にも注意する。
治療
- 第一選択:ニューキノロン系やホスホマイシンなどの抗菌薬投与
- 補助療法:輸液による脱水補正、電解質管理
- 注意点:抗菌薬耐性株やHUS発症例では治療法の選択に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬使用歴・重篤な下痢 | 便中Clostridioides difficile毒素 |
| 腸結核 | 慢性経過・発熱・体重減少 | 結核菌培養・PCR |
| アメーバ赤痢 | 渡航歴・持続性下痢・肝膿瘍合併 | 便中アメーバ検出 |
補足事項
日本では衛生環境の改善により発生頻度は減少したが、海外渡航者や集団生活施設での集団感染が散発する。耐性菌の増加や溶血性尿毒症症候群の合併にも留意する必要がある。