悪性高熱症
概要
悪性高熱症は、全身麻酔薬や筋弛緩薬投与を契機に発症する遺伝的素因による急性の高体温・筋硬直を特徴とする重篤な代謝異常症候群。筋細胞内カルシウム代謝異常が病態の中心で、迅速な対応が生死を分ける。ダントロレンが唯一の特異的治療薬である。
要点
- 全身麻酔薬・筋弛緩薬により発症する急性代謝異常
- 高体温・筋硬直・高CK血症・高カリウム血症が特徴
- ダントロレン投与と速やかな支持療法が必須
病態・原因
リアノジン受容体(RYR1)遺伝子異常が多く、揮発性吸入麻酔薬やスキサメトニウム投与で筋細胞内カルシウム過剰流入が生じ、筋収縮持続と異常な熱産生・代謝亢進をきたす。家族歴が重要なリスク因子となる。
主症状・身体所見
急激な体温上昇、全身の筋硬直、頻脈、呼吸性・代謝性アシドーシス、高カリウム血症に伴う不整脈、ミオグロビン尿などが出現する。麻酔中あるいは直後に発症しやすい。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | CK著増、ミオグロビン血症 | 高カリウム血症、代謝性アシドーシスも |
| 尿検査 | ミオグロビン尿 | 横紋筋融解症の証拠 |
| 血液ガス分析 | 代謝性アシドーシス、乳酸増加 | CO2上昇・呼吸性アシドーシス合併も |
診断は臨床経過と特徴的な検査異常から行う。確定にはカフェイン・ハルタン誘発筋収縮試験が参考となる。筋生検による遺伝子検査も可能。
治療
- 第一選択:ダントロレン静注
- 補助療法:冷却、循環・呼吸管理、電解質補正、腎保護
- 注意点:原因薬剤の即時中止、早期治療開始が予後を左右
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 熱射病 | 麻酔歴なし、環境要因で発症 | CK上昇は軽度、筋硬直なし |
| 悪性症候群 | 抗精神病薬使用歴、意識障害が主 | CK上昇もみられるが発症契機が異なる |
補足事項
悪性高熱症は遺伝性であり、家族歴の聴取が重要。麻酔前評価で既往歴や家族歴を確認し、疑わしい場合は安全な麻酔薬選択が推奨される。ダントロレンの備蓄体制も重要である。