急性肺血栓塞栓症

概要

急性肺血栓塞栓症は、主に下肢深部静脈などで形成された血栓が肺動脈に塞栓し、急性の呼吸循環障害を引き起こす疾患である。突然の呼吸困難や胸痛、ショックなど多彩な症状を呈し、迅速な診断と治療が予後を左右する。深部静脈血栓症と合わせて静脈血栓塞栓症(VTE)の一部とされる。

要点

  • 下肢深部静脈血栓が主な原因で、肺動脈に塞栓を起こす
  • 急性呼吸困難、胸痛、失神・ショックなど多彩な症状を呈する
  • 早期診断と抗凝固療法が生命予後を大きく左右する

病態・原因

多くは下肢や骨盤内の深部静脈血栓が剥離し肺動脈を閉塞することで発症する。血流停滞、血管内皮障害、過凝固状態(いわゆるVirchowの三徴)がリスク因子となる。長期臥床、手術後、悪性腫瘍、妊娠・産褥、経口避妊薬の使用などが誘因となる。

主症状・身体所見

突然発症の呼吸困難、胸痛(特に呼吸時)、頻呼吸、頻脈が典型的である。重症例では失神、ショック、チアノーゼ、心停止に至ることもある。下肢の腫脹や疼痛を伴う場合は深部静脈血栓症の合併を示唆する。

検査・診断

検査所見補足
Dダイマー上昇除外診断に有用、特異度は低い
造影CT(CTPA)肺動脈内の血栓像診断のゴールドスタンダード
心エコー右心負荷所見、右室拡大重症例やショック例で施行

Dダイマー陰性で臨床的リスクが低い場合は除外可能。確定診断には造影CT(CTPA)が最も有用で、肺動脈内の血栓像を直接描出する。心エコーや血液ガス分析も重症度評価や鑑別に役立つ。

治療

  • 第一選択:抗凝固療法(ヘパリン、ワルファリン、DOACなど)
  • 補助療法:酸素投与、循環管理、下大静脈フィルター(禁忌例や再発例)
  • 注意点:ショック例では血栓溶解療法や外科的血栓除去も考慮

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
急性心筋梗塞胸痛が持続し、心電図でST上昇トロポニン上昇、冠動脈造影で狭窄
気胸突然の胸痛・呼吸困難、片側性所見胸部X線で肺虚脱像
肺炎発熱・咳嗽・痰、徐発症胸部X線で浸潤影、炎症反応上昇

補足事項

予防的抗凝固療法や早期離床が発症予防に重要である。高齢者や悪性腫瘍患者では非典型的な経過をとることがあるため注意が必要。診断の遅れが致命的となるため、疑った時点で迅速な評価を行う。

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