脂肪塞栓症候群

概要

脂肪塞栓症候群は、長管骨骨折や大手術後に脂肪滴が血中に流入し、主に肺・中枢神経・皮膚などに塞栓症状を呈する全身性障害である。発症は外傷後24〜72時間以内が多く、重篤な場合は呼吸不全や意識障害をきたす。診断・治療ともに迅速な対応が求められる。

要点

  • 長管骨骨折や外傷後に発症する全身性塞栓症候群
  • 呼吸障害・神経症状・皮下出血点の三徴が特徴
  • 予防と支持療法が治療の中心

病態・原因

主な原因は大腿骨・骨盤などの長管骨骨折や外傷、整形外科手術で、骨髄内の脂肪が血管内に流入し微小血管を塞栓することで発症する。脂肪塞栓による血管閉塞と、遊離脂肪酸による組織障害が病態の中心となる。

主症状・身体所見

発症は外傷や手術後24〜72時間以内が多く、急速な呼吸困難、低酸素血症、意識障害、錯乱、発熱、頻脈、点状皮下出血(特に胸部・腋窩・結膜)が特徴的である。尿中や喀痰中の脂肪滴もみられることがある。

検査・診断

検査所見補足
動脈血ガス分析低酸素血症、PaO2低下呼吸不全の評価
胸部X線・CT両側びまん性浸潤影、間質性変化他疾患との鑑別に有用
尿・喀痰検査脂肪滴の検出特異度は低いが診断補助となる

診断は臨床経過と三徴(呼吸障害・神経症状・皮下出血点)を中心に行い、Gurdの診断基準が参考となる。画像では両側性の浸潤影が特徴的だが、特異的な所見は少ない。その他、血小板減少や貧血、血清脂肪滴増加なども補助所見となる。

治療

  • 第一選択:酸素投与、必要に応じて人工呼吸管理
  • 補助療法:循環動態・水分・電解質管理、安静、骨折固定
  • 注意点:予防的早期骨折固定、輸液過剰回避、抗凝固薬は原則無効

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
急性肺血栓塞栓症発症がより急激、深部静脈血栓の既往Dダイマー上昇、CT血管造影で塞栓像
ARDS多彩な原因、外傷既往がない場合も画像所見は類似、脂肪滴検出なし

補足事項

脂肪塞栓症候群は若年外傷患者で特に注意が必要であり、早期骨折整復や適切な輸液管理が発症予防に寄与する。特異的治療法は確立しておらず、支持療法が中心となる。重症例ではICU管理が必要となる場合がある。

関連疾患