天然痘

概要

天然痘は、痘瘡ウイルス(バリオラウイルス)による急性の伝染性感染症である。特徴的な発疹と高い致死率を有し、20世紀後半のワクチン普及により根絶された。現在は自然発生例はなく、生物兵器としての懸念も指摘される。

要点

  • バリオラウイルスによる全身性ウイルス感染症
  • 特徴的な膿疱性発疹と高い致死率
  • 1980年にWHOによって根絶宣言

病態・原因

天然痘はバリオラウイルス(Orthopoxvirus属)の感染によって発症し、飛沫感染や接触感染で伝播する。ウイルスは上気道粘膜から体内に侵入し、リンパ組織で増殖後、全身にウイルス血症を引き起こす。

主症状・身体所見

発熱、頭痛、背部痛などの前駆症状の後、顔面から四肢にかけて特徴的な膿疱性発疹が出現する。発疹は紅斑、丘疹、水疱、膿疱、痂皮と進行し、同時期に同じステージの発疹がみられることが特徴である。

検査・診断

検査所見補足
PCR検査バリオラウイルスDNA検出発疹内容物・咽頭ぬぐい液
電子顕微鏡ウイルス粒子の観察痘瘡ウイルス特有の形態
血清学的検査抗体価上昇急性期・回復期ペア血清

天然痘は臨床症状(発疹の分布・進行)と疫学的背景から強く疑われる。確定診断にはPCRによるウイルス遺伝子検出や電子顕微鏡によるウイルス粒子確認が有用である。画像診断は特異的所見を持たない。

治療

  • 第一選択:対症療法(安静、解熱、補液など)
  • 補助療法:二次感染予防のための抗菌薬投与
  • 注意点:感染隔離・厳重な感染管理、曝露後ワクチン接種

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
水痘・帯状疱疹発疹の多段階性、体幹優位VZV抗原・DNA検出
伝染性単核症咽頭炎・リンパ節腫脹が主体EBウイルス抗体陽性
麻疹コプリック斑、発疹の消退時の色素沈着麻疹ウイルス抗体検査

補足事項

天然痘はワクチンによる予防が極めて有効であり、世界的な根絶に成功した数少ない感染症である。現在は自然感染例は存在しないが、バイオテロリズムの観点から監視体制が維持されている。

関連疾患