外傷後ストレス障害
概要
外傷後ストレス障害(PTSD)は、生命の危機や強い恐怖・無力感を伴う外傷的出来事を体験した後に発症する精神障害である。再体験、回避、過覚醒などの症状が特徴で、長期間にわたり社会的・職業的機能障害をもたらすことがある。適切な診断と治療が重要である。
要点
- 強い外傷体験後に発症し、再体験・回避・過覚醒が三主徴
- 慢性化や社会的機能障害をきたしやすい
- 早期介入と心理社会的支援が予後に影響
病態・原因
生命の危機や暴力、災害、事故、虐待など強い外傷体験が発症の契機となる。ストレス応答系(HPA軸やノルアドレナリン系)の過活動や、恐怖記憶の消去障害が病態の基盤とされる。既往歴や遺伝的素因、社会的サポートの有無もリスク因子となる。
主症状・身体所見
外傷体験のフラッシュバックや悪夢などの再体験症状、関連刺激の回避、持続的な警戒心や驚愕反応の亢進(過覚醒)、感情麻痺などがみられる。抑うつや不安、睡眠障害、自殺念慮を伴うことも多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 精神科的面接 | 再体験・回避・過覚醒症状 | DSM-5診断基準による評価 |
| 心理検査(CAPS等) | 症状の重症度評価 | 客観的な症状評価に用いる |
| 生理学的指標 | 睡眠障害や自律神経亢進 | 睡眠ポリグラフや心拍変動等 |
診断はDSM-5などの診断基準に基づき、外傷体験後に1か月以上持続する特徴的症状の存在を確認する。画像所見は特異的ではないが、慢性例で海馬の萎縮などが報告されている。
治療
- 第一選択:認知行動療法(CBT)や持続エクスポージャー療法
- 補助療法:SSRIなどの抗うつ薬、睡眠薬、支持的精神療法
- 注意点:再体験誘発への配慮、二次的な自殺リスク管理
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 適応障害 | 外傷体験の有無・症状の持続期間 | PTSDは1か月以上持続し再体験が明瞭 |
| 解離性障害 | 現実検討力の障害・記憶の断片化 | 解離症状が主で再体験は目立たない |
| うつ病 | 気分の持続的低下・自責感 | PTSDでは再体験・回避が中心 |
補足事項
PTSDは小児や高齢者にも発症しうる。複雑性PTSD(長期反復的外傷による重症型)や、身体疾患との併存例も重要である。近年はトラウマインフォームドケアの普及やオンライン心理療法の活用も進んでいる。