四塩化炭素中毒
概要
四塩化炭素中毒は有機溶剤の四塩化炭素(CCl₄)を吸入または経口摂取することで発症し、主に肝障害と腎障害を引き起こす急性中毒である。工業用途や洗浄剤、消火器などに使われていたが、強い毒性のため現在は使用が制限されている。重症例では多臓器不全や死亡に至ることもある。
要点
- 肝障害・腎障害が主な臓器障害
- 吸入・経口摂取で急性中毒を発症
- 早期の診断と支持療法が予後改善に重要
病態・原因
四塩化炭素は体内でラジカル化合物へ代謝され、肝細胞や腎尿細管細胞の膜障害を引き起こす。肝臓では脂質過酸化反応を介した細胞障害が主体で、腎臓でも尿細管壊死を生じる。主なリスクは職業曝露や誤飲である。
主症状・身体所見
初期には悪心・嘔吐・頭痛・めまいなどの非特異的症状が現れる。数時間から数日で黄疸、右上腹部痛、意識障害などの肝不全症状や、乏尿・血尿などの腎不全症状が出現する。重症例では昏睡、多臓器不全に至る。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 肝機能検査 | AST, ALT, LDH, ビリルビン上昇 | 肝細胞障害型パターン |
| 腎機能検査 | BUN, クレアチニン上昇 | 急性腎不全の指標 |
| 血中四塩化炭素濃度 | 検出・上昇 | 暴露診断の補助 |
肝障害・腎障害の進行や重症度評価のために血液生化学検査、尿検査を行う。画像検査(腹部超音波・CT)は肝腫大や腎腫大、浮腫の評価に有用。暴露歴の聴取が診断の決め手となる。
治療
- 第一選択:曝露中止と支持療法(安静、輸液、肝保護、腎代替療法)
- 補助療法:活性炭投与(早期経口摂取例)、ビタミンCやN-アセチルシステイン投与
- 注意点:肝腎障害進行時は集中管理が必要、アルコール摂取は禁忌
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| ベンゼン中毒 | 骨髄抑制・出血傾向が強い | 血球減少、肝腎障害は軽度 |
| 急性肝不全(劇症肝炎) | ウイルス性や薬剤性の既往 | ウイルスマーカーや他薬剤歴 |
| 急性腎障害 | 肝障害が伴わないことが多い | 肝酵素正常、尿細管障害主体 |
補足事項
四塩化炭素はその強い毒性から国内外で使用・流通が厳しく制限されている。曝露後は遅発性に重篤な肝腎障害を生じるため、暴露歴の把握と長期経過観察が重要である。