Eisenmenger症候群
概要
Eisenmenger症候群は、先天性心疾患に伴う左→右シャントが長期間持続し、肺高血圧の進行によってシャント方向が右→左に逆転することで生じる慢性低酸素血症を特徴とする。不可逆的な肺血管障害が進行し、チアノーゼや多血症など多彩な全身症状を呈する。
要点
- 先天性心疾患に起因する肺高血圧とシャント逆転が本症の本態
- 不可逆的な肺血管病変により根治的治療が困難
- 慢性低酸素血症による多臓器障害や血栓症リスクが高い
病態・原因
心室中隔欠損症や心房中隔欠損症、動脈管開存症などの左→右シャント性先天性心疾患が長期間持続することで、肺血流の増加と肺動脈圧上昇を招き、次第に肺血管の不可逆的なリモデリングが進行する。結果として肺高血圧が悪化し、シャント方向が右→左に逆転する。
主症状・身体所見
チアノーゼ、ばち指、労作時呼吸困難などが主症状であり、慢性低酸素血症に起因する多血症や易疲労感、失神発作もみられる。右心不全徴候や、肺高血圧に伴う心雑音、肝腫大、浮腫なども出現する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 心エコー | 右心系拡大、肺動脈圧上昇、右→左シャント | 先天性心疾患の同定に有用 |
| 心臓カテーテル | 肺動脈圧上昇、動脈血酸素飽和度低下 | 肺血管抵抗の評価 |
| 胸部X線 | 肺動脈拡大、右心系肥大 |
診断は心エコーや心臓カテーテル検査で肺高血圧と右→左シャントの存在を確認し、基礎となる先天性心疾患を同定することで行う。動脈血ガス分析で低酸素血症、多血症の検出も参考となる。
治療
- 第一選択:肺高血圧治療薬(エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬など)
- 補助療法:酸素投与、抗凝固療法、鉄補充、対症療法
- 注意点:シャント閉鎖手術は禁忌、感染性心内膜炎予防や妊娠回避も重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 肺高血圧症 | 先天性心疾患やシャントの有無 | シャントなし、右心負荷のみ |
| 心房中隔欠損症 | チアノーゼの有無、シャント方向 | 右→左シャントを認めない |
| Fallot四徴症 | 乳児期からチアノーゼ、心雑音 | 肺動脈狭窄、VSDを伴う |
補足事項
Eisenmenger症候群は進行性かつ不可逆性の疾患であり、根治的治療は心肺移植に限られる。妊娠は母体死亡リスクが極めて高いため厳重な避妊指導が必要。感染性心内膜炎や血栓塞栓症のリスク管理も重要となる。