遺伝性楕円赤血球症
概要
遺伝性楕円赤血球症は、赤血球膜骨格異常による先天性溶血性貧血の一種で、赤血球が楕円形となる疾患。常染色体優性遺伝を示し、スペクトリンやバンド4.1などの膜タンパク異常が原因となる。貧血の重症度は個人差が大きい。
要点
- 赤血球膜骨格異常による先天性溶血性貧血
- 赤血球が楕円形や卵形を呈する
- 無症状から重度貧血まで多様な臨床像
病態・原因
主に赤血球膜骨格タンパク(スペクトリン、バンド4.1、グリシンなど)の異常によって赤血球の形態安定性が失われ、赤血球が楕円形となる。常染色体優性遺伝が多いが、劣性遺伝例も存在する。膜骨格の脆弱化により脾臓での破壊が亢進し、溶血が生じる。
主症状・身体所見
多くは無症状だが、重症例では貧血による倦怠感、黄疸、脾腫がみられる。新生児期に黄疸が強く現れる場合もある。溶血発作時には急激な貧血や黄疸増強を認めることがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液塗抹標本 | 楕円形・卵形赤血球の増加 | 形態異常が診断の鍵 |
| 溶血マーカー | 間接ビリルビン上昇、LDH上昇、網赤血球増加 | 溶血性貧血の所見 |
| 浸透圧脆弱性試験 | 正常または軽度低下 | 球状赤血球症と比較して特徴的 |
赤血球形態異常の確認が診断の基本。家族歴、遺伝子解析、赤血球膜タンパクの検出で確定診断が可能。球状赤血球症との鑑別が重要。
治療
- 第一選択:無症状例は経過観察、重症例や溶血発作時は輸血
- 補助療法:葉酸補充、感染予防、重症例では脾摘も考慮
- 注意点:脾摘後の感染症リスクに対するワクチン接種
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 遺伝性球状赤血球症 | 球状赤血球、浸透圧脆弱性試験陽性 | 球状赤血球増加、浸透圧脆弱性↑ |
| サラセミア | 小球性貧血、標的赤血球 | Hb電気泳動異常、鉄正常 |
補足事項
軽症例は無症候性で偶然発見されることも多い。重症例では溶血発作の予防や脾摘後管理が重要。遺伝子診断の進歩により病態解明が進んでいる。