脊髄性筋萎縮症
概要
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、下位運動ニューロンの変性を主因とする遺伝性神経筋疾患。主に乳幼児期に発症し、進行性の筋力低下と筋萎縮を特徴とする。SMN1遺伝子の変異が原因であり、重症度によりいくつかの型に分類される。
要点
- SMN1遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝疾患
- 進行性の筋力低下と筋萎縮が主症状
- 発症年齢や重症度により臨床型が分類される
病態・原因
脊髄性筋萎縮症はSMN1遺伝子の機能喪失変異により、運動ニューロンの生存に不可欠なSMNタンパクの産生が低下し、脊髄前角細胞が変性・脱落する。常染色体劣性遺伝形式で発症し、家族歴がみられる場合が多い。
主症状・身体所見
筋力低下と筋萎縮が四肢近位筋を中心に進行し、腱反射の低下または消失がみられる。重症型では呼吸筋障害による呼吸不全や嚥下障害も出現し、乳児型では運動発達の遅れや筋緊張低下が目立つ。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 遺伝子検査 | SMN1遺伝子の欠失・変異 | 診断の決定打 |
| 筋電図 | 神経原性変化(自発放電・高振幅電位) | 下位運動ニューロン障害を示唆 |
| 筋生検 | 筋線維の萎縮と束状化 | 補助的 |
SMN1遺伝子の欠失や変異の有無が診断の中心となる。臨床像や家族歴、筋電図・筋生検所見も参考にされる。画像検査では特異的所見は乏しいが、筋萎縮の評価にMRIが用いられることがある。
治療
- 第一選択:ヌシネルセン(アンチセンスオリゴヌクレオチド)やリズジプラムなど分子標的治療
- 補助療法:呼吸管理、リハビリテーション、栄養管理
- 注意点:呼吸不全や誤嚥性肺炎の予防、家族への遺伝カウンセリング
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 筋萎縮性側索硬化症 | 成人発症・上位運動ニューロン徴候併存 | 上位運動ニューロン所見あり |
| Duchenne型筋ジストロフィー | 男児・筋ジストロフィン異常 | CK高値、遺伝子検査で異常 |
| Charcot-Marie-Tooth病 | 感覚障害や遠位優位の筋萎縮 | 末梢神経伝導速度の低下 |
補足事項
新規治療薬の登場により、かつては致死的だった乳児型SMAの予後が大きく改善している。早期診断・早期治療介入が重症化予防に重要である。