毛細血管拡張性失調症
概要
毛細血管拡張性失調症(ataxia-telangiectasia, AT)は、小児期に発症する常染色体劣性遺伝性疾患であり、小脳性運動失調と毛細血管拡張、免疫不全を主徴とする。ATM遺伝子の異常によるDNA修復障害が病態の根底にある。
要点
- 小脳性運動失調と眼球結膜などの毛細血管拡張が特徴
- 免疫不全による感染症リスク増加と悪性腫瘍合併が多い
- ATM遺伝子変異によるDNA修復障害が発症の根本原因
病態・原因
ATM遺伝子の変異によりDNA二本鎖切断修復が障害され、細胞の増殖や免疫機能、神経系の維持に異常をきたす。常染色体劣性遺伝形式で、家族歴がみられることもある。
主症状・身体所見
歩行障害や構音障害などの小脳性運動失調が幼児期から進行し、眼球結膜や耳介、頸部などに毛細血管拡張が現れる。易感染性や悪性腫瘍発症リスクも高い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清α-フェトプロテイン | 高値 | 乳幼児期以降で上昇 |
| 免疫グロブリン定量 | IgA、IgG、IgE低値、IgM正常~高値 | 免疫不全の評価に有用 |
| 遺伝子検査 | ATM遺伝子変異の同定 | 確定診断 |
診断は臨床症状(失調・毛細血管拡張・免疫不全)と血清α-フェトプロテイン高値、ATM遺伝子変異の同定で行う。脳MRIで小脳萎縮を認める場合が多い。
治療
- 第一選択:対症療法(理学療法、感染予防、免疫グロブリン補充療法)
- 補助療法:リハビリテーション、呼吸管理、栄養管理
- 注意点:放射線感受性が高いため放射線治療は避ける
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Friedreich運動失調症 | 毛細血管拡張や免疫不全はみられない | 免疫異常・α-フェトプロテイン上昇なし |
| 脊髄小脳変性症 | 進行性失調のみ、毛細血管拡張なし | 免疫異常・AFP上昇なし |
補足事項
悪性リンパ腫や白血病などの発症リスクが高く、定期的な腫瘍スクリーニングが重要。感染症への注意と早期治療も不可欠。新規治療法の研究が進行中。