慢性肺血栓塞栓症
概要
慢性肺血栓塞栓症(CTEPH)は、肺動脈内に残存する血栓により慢性的な肺血流障害と肺高血圧をきたす疾患。急性肺血栓塞栓症発症後に血栓が完全に溶解せず、組織化・線維化して肺動脈を閉塞することが原因となる。進行すると右心不全や呼吸不全に至る。
要点
- 肺動脈内に血栓が慢性的に残存し、肺高血圧をきたす
- 労作時呼吸困難や右心不全症状が進行性に出現
- 早期診断・治療が予後改善に重要
病態・原因
急性肺血栓塞栓症の後、肺動脈内の血栓が線維化・組織化して慢性的に残存し、肺動脈の狭窄や閉塞を生じる。血栓溶解能の低下や再発性血栓塞栓症、凝固異常、長期臥床、悪性腫瘍、手術後などがリスク因子となる。
主症状・身体所見
労作時の呼吸困難、易疲労感、動悸、胸痛、浮腫などがみられる。進行例ではチアノーゼ、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫など右心不全所見が現れる。心雑音や右室拡大による胸部異常も認められる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 心エコー | 右室拡大・右室肥大、三尖弁逆流 | 右心負荷・肺高血圧の評価 |
| 肺血管造影 | 肺動脈の狭窄・閉塞像 | 診断のゴールドスタンダード |
| V/Qスキャン | 換気と灌流のミスマッチ | 肺動脈血栓の分布評価 |
| CT肺動脈造影 | 血栓・狭窄・閉塞の直接描出 | 非侵襲的診断法 |
診断は心エコーやV/Qスキャン、CT肺動脈造影で肺高血圧と慢性血栓性閉塞を確認し、最終的には肺血管造影で確定する。肺動脈圧の上昇、右心系拡大、肺動脈血流の途絶などが画像所見として重要。
治療
- 第一選択:肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)
- 補助療法:抗凝固療法、肺血管拡張薬、リハビリテーション、酸素療法
- 注意点:治療適応の評価と右心不全・再発予防の管理が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 急性肺血栓塞栓症 | 急激な症状発症、既往歴 | 血栓の新旧・Dダイマー高値 |
| 肺高血圧症 | 血栓性閉塞の有無 | 肺動脈造影で血栓像なし |
| 慢性閉塞性肺疾患 | 呼吸機能障害が主 | 肺機能検査で閉塞性換気障害 |
補足事項
近年、バルーン肺動脈形成術(BPA)や新規肺血管拡張薬の導入により、外科適応外症例の治療成績も向上している。早期発見と多職種連携による包括的管理が推奨される。