急性肝不全(劇症肝炎)
概要
急性肝不全(劇症肝炎)は、急激な肝細胞障害により肝機能が著しく低下し、意識障害や凝固障害など多臓器不全を来す重篤な疾患である。発症から短期間で進行し、高い致死率を有する。主な原因はウイルス性肝炎や薬剤性肝障害である。
要点
- 急速進行性の肝不全で意識障害と出血傾向が特徴
- ウイルス感染や薬剤性が主な原因
- 早期治療と肝移植の適応判断が重要
病態・原因
急性肝不全は、肝細胞の広範な壊死により肝の解毒・代謝機能が急速に失われることで発症する。原因としてA型、B型、C型肝炎ウイルス感染、薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎などが挙げられる。特にB型肝炎ウイルスや薬剤性が日本で多い。
主症状・身体所見
初期は倦怠感、悪心、食欲不振、黄疸がみられ、進行すると意識障害(肝性脳症)、出血傾向、腹水、浮腫など多臓器不全症状を呈する。肝性口臭や羽ばたき振戦も特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液生化学検査 | AST/ALT高値、ビリルビン上昇 | PT延長・低アルブミン血症 |
| 血液凝固能検査 | PT-INR延長、フィブリノゲン低下 | DIC合併の有無も評価 |
| 画像検査(超音波等) | 肝萎縮、腹水、肝腫瘍の除外 | 肝移植前評価にも用いる |
診断は、発症8週以内に肝性脳症とPT延長(INR≧1.5)を認めることが基準となる。画像検査は肝腫瘍や門脈血栓などの除外に有用。ウイルス抗原抗体や薬剤歴も必須。
治療
- 第一選択:肝移植(適応例)、集中治療管理
- 補助療法:血漿交換、持続血液濾過透析、肝性脳症・出血対策
- 注意点:感染予防、消化管出血予防、早期の移植適応評価
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 肝性脳症 | 慢性肝疾患で進行性意識障害 | 慢性肝不全の既往、進行緩徐 |
| 薬剤性肝障害 | 薬剤服用歴、肝障害の急性発症 | 特定薬剤曝露、ウイルス陰性 |
| Reye症候群 | 小児、アスピリン投与後の肝障害 | 低血糖・高アンモニア血症 |
補足事項
劇症肝炎は発症から数日で多臓器不全に至ることが多く、早期に肝移植施設への搬送を検討する。感染症やDICの合併にも注意が必要である。