子癇
概要
子癇は妊娠高血圧症候群に合併する重篤な痙攣発作であり、妊娠中・分娩時・産褥期に発症する。高血圧・蛋白尿に加え、全身性痙攣や意識障害を呈し、母体・胎児ともに生命に危険を及ぼす。発症時には緊急対応が必要である。
要点
- 妊娠高血圧症候群に伴い発症する全身性痙攣
- 母児ともに高い死亡率と合併症リスク
- 速やかな分娩誘発と支持療法が重要
病態・原因
子癇は妊娠高血圧症候群(特に重症型)に続発し、脳血管の過度な収縮や血管内皮障害、脳浮腫などが発症機序とされる。リスク因子には初産、高齢妊娠、多胎妊娠、基礎疾患(糖尿病や腎疾患)などが挙げられる。
主症状・身体所見
前駆症状として頭痛、視覚異常、上腹部痛などがみられ、全身性強直間代発作(痙攣)を呈する。発作後は意識障害や一過性の神経学的異常が残ることも多い。高血圧や蛋白尿を伴うことが特徴的。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血圧測定 | 高血圧(140/90mmHg以上) | 妊娠高血圧症候群の診断基準 |
| 尿検査 | 蛋白尿の検出 | 0.3g/日以上が基準 |
| 血液検査 | 肝機能・腎機能異常、血小板減少 | HELLP症候群合併の確認 |
| 頭部画像検査 | 脳浮腫、出血の有無 | MRI/CTで評価 |
診断は妊娠高血圧症候群の既往に加え、けいれん発作の出現によって行う。画像検査で脳浮腫や出血の除外も重要である。その他、血液検査で肝障害や腎障害、血小板減少の有無も評価する。
治療
- 第一選択:硫酸マグネシウム静注による痙攣抑制
- 補助療法:降圧薬投与、酸素投与、胎児・母体モニタリング
- 注意点:発作後は速やかな分娩(原則として帝王切開)を検討、再発予防のためのマグネシウム継続投与
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 脳出血 | 妊娠高血圧症候群の有無、局所神経症状 | 画像で出血巣 |
| てんかん | 妊娠・高血圧との関連なし | EEG異常、基礎疾患の有無 |
| 低血糖発作 | 糖尿病既往、発作時の血糖値 | 低血糖の確認 |
補足事項
子癇は分娩時・産褥期にも発症しうるため、産後も注意深い観察が必要である。HELLP症候群や常位胎盤早期剝離などの重篤な合併症リスクが高い。近年はマグネシウム療法の普及により予後は改善傾向にある。