分娩時異常出血
概要
分娩時異常出血は、分娩に伴い通常を超える多量の出血が発生する状態を指す。母体死亡や重篤な合併症の主要因であり、迅速な診断・治療が不可欠である。原因は多岐にわたり、産科DICや弛緩出血、癒着胎盤などが含まれる。
要点
- 分娩時に500mL以上の出血で異常出血と定義される
- 弛緩出血・産道裂傷・胎盤遺残が主な原因
- 迅速な止血・ショック管理・輸血が治療の中心
病態・原因
子宮収縮不全(弛緩出血)、産道損傷、胎盤遺残、凝固障害(産科DICなど)が主な原因となる。リスク因子には多胎妊娠、巨大児、分娩遷延、前置胎盤や癒着胎盤の既往などが挙げられる。
主症状・身体所見
分娩直後または分娩中に持続的な多量の腟出血がみられる。ショック症状(頻脈、血圧低下、意識障害)、蒼白、冷汗などが出現しやすい。子宮底高の上昇や子宮弛緩も重要な所見である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | Hb低下、凝固異常 | DICマーカー、血小板も評価 |
| 超音波検査 | 子宮内残留物の有無 | 胎盤遺残や血腫の確認 |
| バイタルサイン | 血圧低下、頻脈 | ショックの有無を評価 |
分娩時出血量が500mL(帝王切開では1000mL)以上で異常出血と診断する。画像検査で胎盤遺残や産道損傷の有無を確認し、DICの合併にも注意する。
治療
- 第一選択:子宮底マッサージ・子宮収縮薬(オキシトシン、メチルエルゴメトリン等)
- 補助療法:輸液・輸血、子宮内バルーン、外科的止血術(縫合・動脈結紮・子宮摘出)
- 注意点:DICやショックの早期対応、原因検索と再発予防
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 弛緩出血 | 子宮弛緩・軟らかい子宮底 | 超音波で子宮収縮不全 |
| 産道裂傷 | 子宮収縮良好でも持続する出血 | 視診で裂傷部位を確認 |
| 胎盤遺残 | 子宮収縮不良・子宮内異物感 | 超音波で胎盤片を確認 |
補足事項
分娩時異常出血は産科救急の代表であり、母体管理の質が予後を大きく左右する。多職種連携や出血量の正確な評価、予防的対応(ハイリスク例の把握)が重要である。