産科DIC
概要
産科DIC(播種性血管内凝固症候群)は、妊娠・分娩に関連して発症する凝固異常で、全身性の微小血栓形成とそれに伴う出血傾向を特徴とする。常位胎盤早期剝離、羊水塞栓症、重症子癇などが主な誘因となる。
要点
- 妊娠・分娩関連の重篤な合併症で発症
- 全身性の凝固異常と出血傾向を示す
- 迅速な診断と治療介入が生命予後を左右
病態・原因
産科DICは、胎盤関連疾患や羊水塞栓、重症妊娠高血圧症候群などが誘因となり、凝固系の過剰活性化と線溶系の異常亢進をきたす。凝固因子・血小板の消費、線溶活性化による二次的な出血傾向が生じる。
主症状・身体所見
主な症状は異常出血(産道出血、皮下出血、血尿など)、ショック、臓器障害(腎不全、肝障害、呼吸不全)である。出血傾向の他、血栓症状も同時に現れることがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血小板数 | 低下 | 進行例で著明に減少 |
| フィブリノゲン | 低下 | 妊娠時基準値は高め |
| PT・APTT | 延長 | 凝固因子消費による |
| FDP・Dダイマー | 上昇 | 線溶系亢進を示す |
DIC診断基準(日本産科婦人科学会など)に基づき、複数項目の異常所見を総合的に評価する。妊娠時はフィブリノゲン基準値が高いため、絶対値の低下に注意が必要。
治療
- 第一選択:原疾患(胎盤早期剝離、羊水塞栓など)の速やかな治療・分娩管理
- 補助療法:新鮮凍結血漿・濃厚血小板・フィブリノゲン製剤投与、輸血、循環管理
- 注意点:ヘパリン使用は原則禁忌(出血優位時)、早期治療介入が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| HELLP症候群 | 肝酵素上昇・溶血・血小板減少 | フィブリノゲン低下は少ない |
| 常位胎盤早期剝離 | 急激な腹痛・胎児機能不全・出血 | DIC合併時は検査異常が重篤 |
補足事項
産科DICは進行が急速であり、母体・胎児ともに生命予後が大きく左右される。妊娠時は凝固系の基準値が非妊時と異なるため、診断・治療開始のタイミングに注意が必要。