乳腺炎
概要
乳腺炎は主に授乳期女性に発症する乳腺の炎症性疾患で、細菌感染が原因となることが多い。乳房の発赤・腫脹・疼痛といった局所症状に加え、発熱など全身症状も伴うことがある。適切な治療を行わないと膿瘍形成や重症化をきたす可能性がある。
要点
- 授乳期に多く発症し、乳房の疼痛・発赤・腫脹が主症状
- 主な原因菌は黄色ブドウ球菌などの細菌感染
- 早期の抗菌薬投与と乳汁排出が治療の基本
病態・原因
乳腺炎は乳頭の亀裂や乳管のうっ滞を契機に、乳腺組織へ細菌(主に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌)が侵入し発症する。授乳時の乳汁うっ滞や乳管閉塞がリスクとなる。非授乳期でも乳腺症や乳管拡張症を基盤に発症することがある。
主症状・身体所見
乳房の局所的な発赤、腫脹、熱感、圧痛がみられ、しばしば発熱や全身倦怠感を伴う。進行すると膿瘍形成や乳頭からの膿性分泌物も認める。乳房の硬結やリンパ節腫脹がみられる場合もある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 乳房視診・触診 | 発赤、腫脹、硬結、圧痛 | 膿瘍形成の有無も評価 |
| 超音波検査 | 乳腺内の腫瘤・膿瘍像 | 膿瘍形成や膿汁貯留を確認 |
| 血液検査 | 白血球増多、CRP上昇 | 炎症反応の評価 |
乳腺炎の診断は典型的な臨床症状と身体所見に基づく。膿瘍形成が疑われる場合や重症例では超音波検査が有用。乳汁や膿の細菌培養で起炎菌を同定することもある。
治療
- 第一選択:抗菌薬(セフェム系、ペニシリン系など)の投与
- 補助療法:乳汁の排出促進、適切な授乳指導、鎮痛・解熱薬
- 注意点:膿瘍形成時は切開排膿が必要、授乳継続の可否を個別判断
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 乳癌 | しこりが硬く境界不明瞭、血性分泌 | 画像で腫瘤・石灰化を認める |
| 乳腺症 | 両側性・周期性の疼痛 | 超音波で嚢胞性変化 |
| 乳房膿瘍 | 明らかな膿瘍形成、波動感 | 超音波で膿瘍腔 |
補足事項
乳腺炎は授乳中断や不適切な乳房ケアが重症化要因となるため、早期対応が重要。再発例や難治例では乳癌との鑑別も念頭に置く。非授乳期乳腺炎は鑑別疾患が多岐にわたるため注意が必要。