ヘリコバクター・ピロリ感染症

概要

ヘリコバクター・ピロリ感染症は、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃粘膜に定着・感染することで発症する。慢性胃炎や消化性潰瘍、胃癌など多様な胃疾患のリスク因子となる。感染は主に幼少期に成立し、無症候性のことも多い。

要点

  • 胃粘膜に持続感染し慢性炎症を引き起こす
  • 消化性潰瘍や胃癌など多彩な疾患のリスクとなる
  • 除菌治療により疾患の発症・再発を抑制できる

病態・原因

ヘリコバクター・ピロリはグラム陰性らせん菌で、ウレアーゼ活性により胃酸環境下でも生存可能となる。主に経口感染であり、幼少期の家族内感染が多い。感染による胃粘膜の慢性炎症が様々な消化器疾患の病態基盤となる。

主症状・身体所見

多くは無症状だが、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、上腹部不快感、腹痛、悪心などを認めることがある。長期感染例では胃癌やMALTリンパ腫の発症リスクが高まる。

検査・診断

検査所見補足
尿素呼気試験尿素分解による呼気中^13CO2増加非侵襲的・高感度
抗体検査(血清/尿)ピロリ抗体陽性スクリーニングに有用
内視鏡生検・培養菌の同定、組織診断病変部の評価や耐性確認可能

尿素呼気試験や抗体検査、便中抗原検査が主な非侵襲的診断法であり、内視鏡下生検による迅速ウレアーゼ試験や培養も行われる。診断は複数の検査で補完的に行うことが推奨される。

治療

  • 第一選択:PPIまたはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー+2種の抗菌薬による除菌療法
  • 補助療法:胃粘膜保護薬や生活指導
  • 注意点:除菌失敗時は薬剤耐性菌の検討と二次除菌、再感染予防

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
機能性ディスペプシアピロリ感染なし、器質的異常なし除菌後も症状残存することあり
急性胃粘膜病変急性発症・NSAIDsやストレス背景ピロリ検査陰性が多い
胃潰瘍病変部の潰瘍形成、ピロリ陽性例多い内視鏡で潰瘍を直接確認可能

補足事項

ピロリ除菌により胃癌リスク低減効果が期待されるが、除菌後も定期的な胃内視鏡フォローが重要。薬剤耐性菌の増加や再感染例も報告されているため、治療成績や疫学動向の最新情報に留意する。

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