パラコート中毒
概要
パラコート中毒は農薬であるパラコート(除草剤)の経口摂取や吸入により発生し、急性中毒では消化管障害、肺線維症、多臓器不全をきたす。極めて致死率が高く、特異的な治療法が乏しいことが特徴である。
要点
- 経口摂取が主な中毒経路で、少量でも重篤化する
- 急性期は消化管障害、数日後に肺障害が進行
- 早期の除染・支持療法が治療の中心
病態・原因
パラコートは細胞内で活性酸素を産生し、消化管から吸収後に肺、腎、肝など多臓器障害を引き起こす。特に肺胞上皮での障害による肺線維症が致死的となる。主なリスク因子は自殺企図や誤飲である。
主症状・身体所見
初期には口腔・咽頭・食道の腐食性障害による疼痛、口腔内潰瘍、嚥下困難、悪心・嘔吐がみられる。進行例では呼吸困難、チアノーゼ、腎不全、肝障害など多臓器不全が出現する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中・尿中パラコート濃度 | 検出されれば診断的 | 濃度と予後が相関 |
| 胸部X線・CT | 肺野の浸潤影、線維化、蜂巣肺 | 肺障害の進行度評価 |
| 血液検査 | 肝腎機能障害、電解質異常、炎症反応 | 多臓器障害の評価に有用 |
血中または尿中パラコート濃度が診断の決め手となる。摂取後1-2日で肺野浸潤影が出現し、以降線維化が進行する。消化管内視鏡で潰瘍や壊死を認めることもある。
治療
- 第一選択:胃洗浄・活性炭投与(早期に限る)、血液浄化療法(血液透析/血漿交換)
- 補助療法:酸素投与(低酸素時のみ慎重に)、支持療法、感染対策
- 注意点:酸素投与は必要最小限とし、予後不良例が多い
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 有機リン中毒 | 神経症状(縮瞳・流涎など) | コリンエステラーゼ低下 |
| アスピリン中毒 | 呼吸性アルカローシス | 血中サリチル酸濃度上昇 |
| メタノール中毒 | 視力障害・代謝性アシドーシス | 血中メタノール濃度上昇 |
補足事項
日本国内ではパラコート製剤の規制が進んでいるが、依然として自殺企図による重篤例が報告されている。摂取量が少量でも致死的となるため、早期診断・治療が極めて重要である。