ハンタウイルス感染症
概要
ハンタウイルス感染症は、ハンタウイルス属による人獣共通感染症で、主に齧歯類からヒトへ伝播する。腎症候性出血熱(HFRS)とハンタウイルス肺症候群(HPS)の二大臨床型が存在し、いずれも重篤な臓器障害を引き起こすことがある。世界各地で流行がみられ、特に農村部や森林地帯での発生が多い。
要点
- 齧歯類(ネズミ類)が主な自然宿主・感染源
- 腎障害や出血傾向、呼吸不全を呈する重症例あり
- 臨床型により腎症候性出血熱と肺症候群に分類
病態・原因
ハンタウイルスはブニヤウイルス科に属し、野生齧歯類の尿や唾液、糞便を介して人に感染する。ウイルスは血管内皮細胞を障害し、血管透過性亢進や臓器障害をもたらす。ヒトからヒトへの感染は極めて稀。
主症状・身体所見
発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛などの前駆症状が出現し、続いて腎障害(蛋白尿、血尿、乏尿・無尿)、出血傾向、腹痛、嘔吐などがみられる。肺症候群では急速な呼吸困難と肺水腫が特徴的。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 血小板減少、腎機能障害、DIC所見 | LDH・AST・ALT上昇も参考 |
| 血清抗体検査 | IgM/IgG抗体陽性 | ペア血清での抗体上昇を確認 |
| PCR検査 | ウイルスRNA検出 | 急性期診断に有用 |
急性期の血液・尿所見とともに、疫学的背景、特異的IgM抗体やPCRによるウイルス遺伝子の検出が診断の決め手となる。画像診断(胸部X線・CT)では肺水腫や胸水貯留がみられることがある。
治療
- 第一選択:支持療法(輸液・電解質補正・腎代替療法など)
- 補助療法:呼吸管理、血液浄化、出血管理
- 注意点:早期の重症化予測と集中治療体制の整備
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 腎症候性出血熱 | ハンタウイルス感染症の主要臨床型 | 抗ハンタウイルス抗体陽性 |
| デング熱 | 発熱・出血傾向・筋肉痛 | デングウイルス抗体陽性 |
| レプトスピラ症 | 腎障害・出血傾向・黄疸を伴う | レプトスピラ抗体陽性 |
補足事項
日本国内での発生は稀だが、アジア・ヨーロッパ・アメリカなど世界各地で流行がみられる。農作業や森林作業従事者は特に注意が必要。致死率は臨床型やウイルス型により大きく異なる。