イヌ回虫症
概要
イヌ回虫症はイヌ回虫(Toxocara canis)による人獣共通感染症で、主に幼虫移行症として発症する。ヒトは経口的に虫卵を摂取し、幼虫が体内で移行することで様々な臓器障害を引き起こす。小児に多く、土壌やペットとの接触がリスクとなる。
要点
- イヌ回虫幼虫の体内移行による多彩な臓器症状
- 好酸球増多や肝腫大などの特徴的所見
- 予防にはペット管理と衛生対策が重要
病態・原因
イヌ回虫症はイヌ回虫の虫卵を経口摂取することで発症し、体内で孵化した幼虫が腸壁から血流に乗り、肝臓・肺・中枢神経など様々な臓器に移行する。幼虫はヒト体内で成虫になれず、組織障害やアレルギー反応を惹起する。
主症状・身体所見
発熱、食欲不振、体重減少、咳嗽、腹痛、肝腫大、皮膚の発疹などがみられる。好酸球増多が顕著で、眼や中枢神経への移行では視力障害や神経症状も出現することがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 好酸球増多、IgE高値 | 非特異的だが重要な所見 |
| 画像検査 | 肝腫大、肺浸潤影 | 超音波・CTで所見を確認 |
| 血清抗体検査 | Toxocara抗体陽性 | 診断の決め手となる |
血清Toxocara抗体の陽性が診断に有用であり、臓器移行に応じた画像所見(肝腫大、肺浸潤影など)も参考となる。好酸球増多やIgE高値は補助的診断所見である。
治療
- 第一選択:アベンダゾールやメベンダゾールなどの駆虫薬
- 補助療法:対症療法(解熱、鎮痛)、重症例ではステロイド投与
- 注意点:ペットや土壌からの再感染予防、衛生管理の徹底
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 回虫症 | 成虫が腸管に寄生し便中に虫体 | 便中虫体検出 |
| アニサキス | 急性胃腸症状と生魚摂取歴 | 内視鏡で虫体摘出 |
| トキソプラズマ症 | リンパ節腫脹、妊婦で胎児感染 | 抗体検査・画像所見 |
補足事項
イヌ回虫症は都市部でも発生例があり、ペットブームや土壌汚染の影響で近年注目されている。幼児や小児が特に罹患しやすく、衛生教育やペットの寄生虫管理が重要である。