イソシアネート中毒
概要
イソシアネート中毒は、主に工業用化学物質であるイソシアネート類の吸入、経皮、または経口曝露によって発症する急性・慢性中毒である。呼吸器症状を中心に、皮膚や粘膜障害、重篤な場合は全身性ショックをきたすこともある。職業性曝露が主な原因となる。
要点
- 主に吸入曝露で急性呼吸器症状を呈する
- 慢性曝露では喘息様症状や肺障害が進行する
- 皮膚・眼・粘膜刺激症状も重要な診断ポイント
病態・原因
イソシアネートはポリウレタン樹脂などの原料で、吸入・経皮・経口曝露により体内に取り込まれる。吸入時は気道粘膜に強い刺激を与え、アレルギー反応や組織障害を引き起こす。慢性曝露では気道過敏性亢進や間質性肺炎のリスクが高まる。
主症状・身体所見
急性では咳嗽、呼吸困難、喘鳴、咽頭痛、目や皮膚の刺激症状が出現する。重症例では肺水腫やショック、意識障害をきたす。慢性曝露では喘息様症状や持続する咳、労作時呼吸困難がみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線/CT | 肺浸潤影、肺水腫像 | 急性期はびまん性陰影、慢性期は線維化像 |
| 呼吸機能検査 | 閉塞性・拘束性障害 | 可逆性の気流制限や拡散能低下を認める |
| 血液ガス分析 | 低酸素血症 | 重症例で酸素化障害 |
曝露歴の聴取が診断の鍵となる。画像では急性期に肺水腫やびまん性浸潤影、慢性期には線維化像がみられる。呼吸機能検査で可逆性の閉塞性障害や拡散能低下が示唆的。
治療
- 第一選択:曝露中止と新鮮空気への移動、酸素投与
- 補助療法:気管支拡張薬、ステロイド全身投与、対症療法
- 注意点:再曝露回避と職場環境の改善、重症例ではICU管理
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 有機リン中毒 | ムスカリン様症状(流涙、縮瞳、下痢) | コリンエステラーゼ低下 |
| アスピリン中毒 | 呼吸性アルカローシス、耳鳴 | 血中サリチル酸値上昇 |
補足事項
作業環境の管理と個人防護具の着用が予防に重要であり、発症した場合は早期の曝露遮断が最も効果的である。慢性曝露症例では職業性喘息との鑑別も必要となる。