抗体薬物複合体(ADC)

概要

抗体薬物複合体(ADC)は、特定の抗原を標的とするモノクローナル抗体に細胞障害性薬物を結合させた分子標的治療薬である。がん細胞表面の抗原に結合し、選択的に抗腫瘍効果を発揮する。近年、固形癌や血液腫瘍に対する新たな治療選択肢として注目されている。

要点

  • 抗体と細胞障害性薬物をリンカーで結合した分子標的治療薬
  • 標的抗原を発現するがん細胞に選択的に作用し副作用を軽減
  • 固形癌・血液腫瘍など多様ながん種で臨床応用が進む

薬理作用・機序

ADCはがん細胞表面の特定抗原を認識する抗体部分と、細胞毒性を持つ薬物(ペイロード)を安定なリンカーで結合した構造を持つ。抗体が標的抗原に結合し細胞内に取り込まれることで、ペイロードが放出され細胞死を誘導する。

禁忌・副作用

主な副作用には骨髄抑制、肝障害、間質性肺疾患、末梢神経障害などがある。標的抗原の発現状況や既往歴によっては重篤な副作用リスクが高まるため、慎重な患者選択と副作用管理が必要となる。

適応疾患

疾患薬理作用補足
乳癌HER2標的細胞障害HER2陽性例に適応
結腸癌標的抗原依存一部ADCが適応取得
悪性リンパ腫CD30標的細胞障害血液腫瘍にも適応

ADCは主にHER2陽性乳癌、CD30陽性悪性リンパ腫、その他特定抗原発現がん(例:結腸癌など)に用いられる。標的抗原の発現が治療効果の鍵となるため、適応は分子診断に基づき決定される。

薬品例

薬品名主に使われるケース
トラスツズマブ エムタンシンHER2陽性乳癌
トラスツズマブ デルクステカンHER2陽性乳癌、胃癌
ブレンツキシマブ ベドチンCD30陽性悪性リンパ腫
ポラツズマブ ベドチン再発・難治性B細胞性リンパ腫

補足事項

ADCは薬剤設計・リンカー技術の進歩により、治療標的や適応疾患が拡大している。今後も新規ADCの開発・承認が期待されている。

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