脳死
概要
脳死は、全脳の不可逆的な機能停止を指し、呼吸や循環の維持が人工的に可能でも自発的な脳機能が消失した状態である。日本では臓器移植の判定基準としても用いられる。診断には厳格な基準と複数回の判定が必要とされる。
要点
- 全脳の不可逆的な機能停止を特徴とする
- 深昏睡・自発呼吸消失・脳幹反射消失が必須
- 臓器移植の法的判定基準として重要
病態・原因
脳死は脳幹を含む全脳の不可逆的な障害によって発生する。原因としては重度の頭部外傷、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、低酸素脳症などが挙げられる。脳浮腫や頭蓋内圧亢進が進行し、脳幹機能が完全に停止することで脳死に至る。
主症状・身体所見
深昏睡状態となり、痛刺激にも全く反応しない。瞳孔は散大し、対光反射を含む全ての脳幹反射が消失する。自発呼吸も消失し、人工呼吸器による呼吸管理が必要となる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 脳幹反射評価 | 対光反射・角膜反射・咽頭反射消失 | すべての脳幹反射が消失 |
| 無呼吸テスト | 二酸化炭素上昇でも自発呼吸なし | PaCO2 60mmHg以上で呼吸運動なし |
| 脳波 | 平坦化 | 30分以上の平坦脳波 |
| 画像検査 | 脳幹部の著明な腫脹や血流消失 | CT/MRI・脳血流シンチグラフィ等 |
脳死判定には深昏睡・自発呼吸消失・全脳幹反射消失が必須であり、補助的に脳波や脳血流検査が行われる。診断は一定時間(日本では6時間以上)を空けて2回以上、専門医による判定が必要。
治療
- 第一選択:不可逆的状態のため治療対象外
- 補助療法:人工呼吸・循環管理による臓器維持
- 注意点:低体温・薬物中毒・代謝性疾患の除外が必要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 植物状態 | 自発呼吸・脳幹反射は保たれる | 脳波は徐波、脳幹反射あり |
| 鉤ヘルニア | 意識障害・瞳孔異常だが一部反射残存 | 脳幹反射や呼吸が一部保たれる |
| 高度低体温 | 低体温是正で意識回復の可能性 | 体温回復で脳幹反射が改善することも |
補足事項
臓器移植法に基づき、家族の同意や法的手続きが必要となる。低体温や薬物中毒、代謝性疾患など可逆的な要因は厳密に除外する必要がある。判定には複数の専門医が関与し、社会的・倫理的配慮も重要である。