糖尿病ケトアシドーシス
概要
糖尿病ケトアシドーシス(DKA)は、インスリン欠乏により高血糖とケトン体産生が亢進し、代謝性アシドーシスをきたす急性代謝障害である。主に1型糖尿病患者に多いが、2型糖尿病でも発症しうる。適切な治療を行わない場合、生命に関わる重篤な状態となる。
要点
- インスリン欠乏による高血糖・ケトン体増加・アシドーシスが三徴
- 脱水・電解質異常・意識障害を合併しやすい
- 迅速な補液・インスリン・電解質補正が治療の基本
病態・原因
インスリン作用の著しい低下や絶対的欠乏を背景に、脂肪分解が亢進しケトン体が過剰産生される。感染症や手術、ストレス、インスリン治療中断などが誘因となる。ケトン体増加により代謝性アシドーシスが進行し、重篤な脱水と電解質異常を伴う。
主症状・身体所見
多飲・多尿・体重減少などの高血糖症状に加え、悪心・嘔吐・腹痛・呼気アセトン臭がみられる。進行例では意識障害や深大呼吸(Kussmaul呼吸)、ショック状態に至ることもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血糖値 | 高値(通常250mg/dL以上) | |
| 血中ケトン体 | 高値(アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸上昇) | 尿ケトン体も陽性 |
| 動脈血液ガス | 代謝性アシドーシス(pH<7.3, HCO3-<15mEq/L) | アニオンギャップ増加 |
| 電解質 | Na, K, Cl異常 | 脱水・腎機能障害も併発 |
診断は高血糖、ケトン体増加、代謝性アシドーシスの三徴で行う。アニオンギャップ増加型アシドーシスが特徴。重症度評価には意識レベルや電解質異常、腎機能も参考とする。
治療
- 第一選択:生理食塩水による補液と持続静注インスリン
- 補助療法:カリウム補正・リン補正・基礎疾患治療
- 注意点:低血糖・低カリウム血症・脳浮腫の予防とモニタリング
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 高浸透圧高血糖症候群 | ケトーシスが軽度~無、より高齢・2型糖尿病に多い | ケトン体増加・アシドーシスは目立たない |
| 乳酸アシドーシス | ケトン体増加なし、乳酸著増 | 血中乳酸高値・ケトン体陰性 |
補足事項
小児や若年者では脳浮腫のリスクが高く、補液速度やNa補正に特に注意が必要。発症予防にはインスリン治療の継続と感染症管理が重要。治療経過中の低血糖・低カリウム血症にも細心の注意を払う。