狂犬病

概要

狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスによる急性致死性脳炎で、主に感染動物の咬傷を介してヒトに伝播する。発症後はほぼ100%致死であり、予防と早期対応が極めて重要である。日本国内では撲滅状態だが、世界的には依然として流行地域が多い。

要点

  • 狂犬病ウイルスによる中枢神経系の急性致死性感染症
  • 動物咬傷後の曝露後ワクチン接種が唯一の予防策
  • 発症後は治療法がなく、ほぼ全例で死に至る

病態・原因

狂犬病ウイルスは感染動物の唾液を介して皮膚や粘膜の傷口から侵入し、末梢神経を通じて中枢神経系へ到達する。ウイルスは脳実質で増殖し、重篤な脳炎を引き起こす。リスク因子は流行地域での動物咬傷や野生動物との接触である。

主症状・身体所見

潜伏期は1〜3か月(まれに数日〜1年以上)で、前駆症状として発熱・咬傷部位の異常感覚が出現する。進行すると不安、錯乱、恐水発作、嚥下・呼吸困難、痙攣、麻痺などを呈し、最終的に昏睡・呼吸停止に至る。

検査・診断

検査所見補足
RT-PCR唾液・咽頭ぬぐい液・皮膚生検でウイルス遺伝子検出生前診断の中心。
蛍光抗体法(皮膚生検)神経細胞内ウイルス抗原の検出うなじ部皮膚生検で実施。
血清抗体価抗狂犬病ウイルス抗体の上昇ワクチン接種歴や曝露歴の評価に有用。

発症例の診断は臨床経過と曝露歴が重要で、確定診断にはウイルス遺伝子や抗原検出が必要。画像では脳炎所見がみられるが特異的ではない。

治療

  • 第一選択:曝露後ワクチン接種(曝露直後から複数回投与)
  • 補助療法:咬傷部の徹底洗浄、ヒト狂犬病免疫グロブリン投与
  • 注意点:発症後の有効な治療法はなく、曝露前・曝露後予防が最重要

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
急性脳炎動物咬傷歴の有無、恐水発作の有無狂犬病ウイルス遺伝子の検出
破傷風開口障害・筋痙攣、恐水発作なしテタノスパスミン検出、咬傷歴
日本脳炎蚊刺咬歴、季節性、恐水発作なし日本脳炎ウイルス抗体価上昇

補足事項

狂犬病は発症後の致死率がほぼ100%であり、曝露後の迅速な対応が唯一の救命手段である。日本では撲滅状態だが、海外では依然として流行しており、動物咬傷時のリスク評価が重要となる。

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