無痛性甲状腺炎

概要

無痛性甲状腺炎は、甲状腺の無痛性炎症により一過性の甲状腺機能亢進症を呈する自己免疫性疾患である。主に中年女性に多く、甲状腺腫大や軽度の甲状腺機能低下症を経て自然軽快することが多い。抗甲状腺抗体陽性が多く、再発もみられる。

要点

  • 無痛性で一過性の甲状腺機能亢進症を呈する
  • 自然軽快しやすいが再発もある
  • 抗甲状腺抗体陽性が多い

病態・原因

自己免疫機序により甲状腺濾胞細胞が障害され、甲状腺ホルモンが一過性に血中へ漏出する。出産後や慢性甲状腺炎(橋本病)患者に多く、薬剤(インターフェロンなど)も誘因となることがある。

主症状・身体所見

無痛性の甲状腺腫大が主で、発熱や圧痛はほとんどない。動悸、発汗、体重減少など甲状腺機能亢進症状がみられるが、重症化はまれ。経過中に一過性の甲状腺機能低下症を呈することもある。

検査・診断

検査所見補足
甲状腺機能検査FT4・FT3高値、TSH低値甲状腺機能亢進状態を示す
抗甲状腺抗体抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体陽性自己免疫性の証拠となる
甲状腺シンチ取り込み低下ホルモン漏出型亢進症の鑑別に有用

甲状腺エコーでびまん性低エコー、血流増加は目立たない。診断は臨床経過、抗体所見、シンチグラフィ所見などを総合して行う。

治療

  • 第一選択:対症療法(β遮断薬など)
  • 補助療法:必要に応じて甲状腺ホルモン補充(低下症期)
  • 注意点:抗甲状腺薬は無効、再発の可能性に留意

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
Basedow病眼症状・血流増加・TRAb陽性シンチで取り込み亢進
亜急性甲状腺炎圧痛・発熱・炎症反応強い赤沈↑、CRP↑、甲状腺圧痛あり
慢性甲状腺炎甲状腺機能低下、腫大持続甲状腺機能低下、抗体強陽性

補足事項

再発例や出産後発症例では経過観察が重要。抗甲状腺薬は無効であり、自然軽快が多いため過剰治療を避ける。橋本病との関連が強い。

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