日本住血吸虫症
概要
日本住血吸虫症は住血吸虫(Schistosoma japonicum)による寄生虫感染症で、主に淡水域で感染する。慢性的な肝臓障害や門脈圧亢進症を引き起こすことが特徴で、日本では撲滅されたが、東南アジアなど一部地域で依然として流行がみられる。
要点
- 感染経路は淡水中のミヤイリガイを介した経皮感染
- 慢性期には肝・脾腫や門脈圧亢進症、消化管出血を生じる
- 日本国内では根絶したが、海外渡航歴ある場合は注意
病態・原因
日本住血吸虫の幼虫(セルカリア)が淡水中で皮膚から侵入し、体内で成虫となり門脈系に寄生する。虫卵が肝臓や腸管壁に沈着し、慢性炎症や線維化を引き起こす。感染リスクは汚染水域での水仕事や遊泳によって高まる。
主症状・身体所見
急性期には発熱、蕁麻疹、咳嗽、腹痛などがみられる。慢性期では肝腫大、脾腫、腹水、下腿浮腫、消化管出血(特に食道静脈瘤破裂)などが出現する。重症例では門脈圧亢進症による合併症が問題となる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 虫卵検出(糞便・直腸粘膜生検) | 特徴的な卵の確認 | 診断のゴールドスタンダード |
| 腹部超音波・CT | 肝脾腫、門脈拡張 | 慢性期の肝線維化や門脈圧亢進の評価 |
| 血清抗体検査 | 抗Schistosoma抗体陽性 | 補助診断として有用 |
虫卵の検出が確定診断となる。画像診断では肝脾腫や門脈拡張、線維化像がみられる。血清抗体は流行地での曝露歴がある場合のスクリーニングや補助診断に用いる。
治療
- 第一選択:プラジカンテル投与
- 補助療法:対症療法、門脈圧亢進症への対応(β遮断薬、内視鏡的治療など)
- 注意点:再感染予防、流行地への曝露回避、肝機能障害の管理
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 肝硬変 | アルコールやウイルス性肝炎の既往、症状類似 | 虫卵検出なし、肝炎ウイルスマーカー陽性例あり |
| 肝膿瘍 | 発熱・局所疼痛が強い、膿瘍像 | 画像で限局性膿瘍、虫卵検出なし |
| 門脈圧亢進症 | 肝疾患全般で生じうる | 原因疾患の特定が必要 |
補足事項
日本国内では撲滅されたが、歴史的には重要な寄生虫疾患であり、流行地への渡航歴や移住者では今なお鑑別対象となる。東南アジア、中国、フィリピンなどでの感染例が報告されている。