抗菌薬による急性出血性腸炎
概要
抗菌薬による急性出血性腸炎は、主に小児や若年成人にみられる抗菌薬投与後の急性腸炎であり、著明な血性下痢を特徴とする。しばしばペニシリン系やセフェム系抗菌薬投与後に発症し、腸管の炎症と出血が主体となる。重症例では脱水やショックを来すこともある。
要点
- 抗菌薬投与後に急性出血性腸炎が発症する
- 血性下痢・腹痛が主症状で、重症化に注意
- 治療は抗菌薬中止と支持療法が中心
病態・原因
主にペニシリン系やセフェム系抗菌薬の使用により、腸内細菌叢のバランスが崩れ、腸管内で特定細菌(Klebsiella oxytocaなど)が異常増殖することで発症する。腸粘膜の炎症と壊死性変化、血管障害による出血が病態の中心となる。
主症状・身体所見
突然発症する腹痛と血性下痢が典型的で、発熱は軽度または認めないことが多い。脱水や腹部膨満もみられることがある。重症例ではショックや腸穿孔に至ることもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 白血球増多、CRP軽度上昇 | 炎症反応は中等度 |
| 便検査 | 血便、病原菌検出なし | Klebsiella oxytoca検出例あり |
| 大腸内視鏡 | 粘膜のびまん性発赤・出血 | 潰瘍や偽膜形成は少ない |
診断は抗菌薬投与歴と臨床症状、内視鏡所見から総合的に行う。C. difficile陰性であること、Klebsiella oxytocaの検出が補助的診断となる。
治療
- 第一選択:原因抗菌薬の中止
- 補助療法:輸液による脱水補正、電解質管理、対症療法
- 注意点:重症例では腸穿孔やショックの早期発見・対応が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 偽膜性腸炎 | 偽膜形成・C. difficile陽性 | 便毒素検査陽性、内視鏡で偽膜 |
| 感染性腸炎 | 発熱・嘔吐・流行状況 | 便培養で他菌検出あり |
| 虚血性大腸炎 | 高齢者・左側腹痛・一過性 | 造影CTで腸管壁肥厚、血流障害 |
補足事項
抗菌薬による急性出血性腸炎は近年報告が増加しており、特に小児・若年成人で注意が必要。再発予防のためには安易な抗菌薬投与の回避が推奨される。