急性散在性脳脊髄炎
概要
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)はウイルス感染やワクチン接種後に発症することが多い、中枢神経系の急性炎症性脱髄疾患である。多発性硬化症と異なり、単相性が多く小児に多発する。症状は急性発症し、意識障害や多彩な神経症状を呈する。
要点
- ウイルス感染やワクチン接種後に発症することが多い
- 急性発症の多彩な神経症状と意識障害が特徴
- MRIで多発性の脱髄性病変を認める
病態・原因
主にウイルス感染やワクチン接種後、自己免疫機序により中枢神経系の広範な脱髄が生じる。分子模倣による免疫応答異常が発症の中心と考えられている。小児や若年成人に多い。
主症状・身体所見
発熱、頭痛、嘔吐、意識障害、痙攣、運動麻痺、失語、視力障害など多彩な神経症状を呈する。発症は急性で、進行も速いことが多い。髄膜刺激症状を伴うこともある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| MRI | 白質を中心とした多発性脱髄病変 | 特に大脳白質・脳幹・脊髄に分布 |
| 髄液検査 | 軽度の細胞増多・蛋白上昇 | オリゴクローナルバンドは通常陰性 |
| 血液検査 | 炎症反応上昇 | 感染症の除外に有用 |
MRIで広範な白質病変を認めることが診断の鍵となる。髄液検査では軽度の細胞増多や蛋白上昇がみられるが、多発性硬化症に特徴的なオリゴクローナルバンドは通常認めない。
治療
- 第一選択:高用量ステロイドパルス療法
- 補助療法:免疫グロブリン静注療法や血漿交換療法
- 注意点:再発例や重症例では追加免疫抑制療法を考慮
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 多発性硬化症 | 再発寛解を繰り返す、成人に多い | オリゴクローナルバンド陽性、MRIで時間的・空間的多発性 |
| 視神経脊髄炎 | 視神経炎と脊髄炎が主、抗AQP4抗体陽性 | MRIで長大な脊髄病変、抗AQP4抗体陽性 |
補足事項
ADEMは単相性経過が多く、予後は比較的良好とされる。再発や慢性化は稀だが、鑑別疾患との区別が重要である。成人例や非典型例では多発性硬化症との鑑別に注意。