妊娠悪阻
概要
妊娠悪阻は、妊娠初期に持続的な悪心・嘔吐を主症状とし、体重減少や脱水、電解質異常を来す病態。重症例では入院治療が必要となることがある。一般的なつわりと異なり、日常生活に支障を来すほど症状が強い。
要点
- 妊娠初期に持続的な悪心・嘔吐が出現する
- 重症化すると脱水や電解質異常、体重減少を伴う
- 治療は安静・補液・対症療法が中心となる
病態・原因
妊娠に伴うhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やエストロゲンの急激な上昇が発症に関与するとされる。精神的ストレスや体質、初産婦、多胎妊娠、胞状奇胎などもリスク因子となる。
主症状・身体所見
持続的な悪心・嘔吐が特徴で、食事摂取が困難となる。体重減少(妊娠前の5%以上)、脱水、ケトーシス、低血圧、頻脈、尿量減少などがみられる。重症の場合、意識障害や肝機能障害を伴うこともある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 尿検査 | ケトン体陽性、比重上昇 | 脱水・飢餓状態の指標 |
| 血液検査 | 電解質異常(低K, 低Na)、肝機能障害 | 重症例で異常が顕著 |
| 血液ガス分析 | 代謝性アルカローシス | 嘔吐によるH+喪失 |
臨床的には妊娠初期に持続的な悪心・嘔吐、体重減少、尿ケトン陽性を認め、他疾患(消化管疾患や中枢神経疾患など)を除外して診断する。腹部超音波で多胎妊娠や胞状奇胎の有無も確認する。
治療
- 第一選択:安静、補液(生理食塩水・糖液)、ビタミンB1補給
- 補助療法:制吐薬、栄養管理(経口・経静脈)、心理的サポート
- 注意点:重症例では入院、電解質補正、ビタミンB1欠乏予防(ウェルニッケ脳症予防)
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 急性胃腸炎 | 発熱や下痢を伴うことが多い | 感染徴候、便培養陽性 |
| 消化性潰瘍 | 空腹時・夜間に腹痛が強い | 上部消化管内視鏡で潰瘍確認 |
| 胆石症 | 右上腹部痛・発熱・黄疸 | 腹部エコーで結石確認 |
補足事項
妊娠悪阻は妊娠12~16週頃までに自然軽快することが多いが、重症例は母体・胎児に重大な影響を及ぼすため早期対応が重要。ビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症の発症予防も必須である。