大腸菌感染症
概要
大腸菌感染症は、主に腸管出血性や腸管毒素原性などの病原性大腸菌による感染症で、消化器症状を中心に多様な臨床像を示す。食中毒や日和見感染、尿路感染症の原因にもなり、乳幼児や高齢者では重症化しやすい。感染経路は経口感染が主体で、衛生環境の影響を強く受ける。
要点
- 病原性大腸菌の種類によって症状や重症度が異なる
- 重症例では溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併に注意
- 衛生管理と早期診断・治療が予後改善に重要
病態・原因
病原性大腸菌は、腸管出血性(EHEC)、腸管毒素原性(ETEC)、腸管侵入性(EIEC)など複数の型があり、それぞれ異なる毒素や侵襲機構を持つ。主なリスク因子は汚染された飲食物の摂取や不十分な手洗い、集団生活環境での感染拡大などが挙げられる。
主症状・身体所見
水様性下痢、激しい腹痛、発熱、嘔吐が典型的で、腸管出血性大腸菌では血便を伴うことが多い。重症例では脱水や意識障害、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの全身症状が出現することがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 便培養 | 病原性大腸菌の同定 | O157やO26など特定血清型の検出 |
| 血液検査 | 白血球増多、腎機能障害 | HUS合併時は溶血・血小板減少 |
| PCR法 | 病原遺伝子検出 | 病原型の迅速診断に有用 |
便培養で病原性大腸菌を同定し、必要に応じて血清型や毒素遺伝子(ベロ毒素など)をPCRで確認する。重症例では腎機能や血液像の評価も重要。画像検査は通常不要だが、重症例では合併症評価目的で施行されることがある。
治療
- 第一選択:補液・対症療法が基本、重症例では入院管理
- 補助療法:抗菌薬(適応は限定的)、腎代替療法(HUS時)
- 注意点:抗菌薬投与はHUSリスク増大のため慎重に判断
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| サルモネラ感染症 | 発熱・下痢・嘔吐が主体、血便は稀 | 便培養でサルモネラ属検出 |
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬使用歴、重度の水様性下痢 | 便中クロストリジウム・ディフィシル毒素検出 |
| ロタウイルス胃腸炎 | 小児に多く冬季流行、嘔吐が顕著 | 便中ウイルス抗原検出 |
補足事項
腸管出血性大腸菌感染症は集団発生事例が多く、保健所への届出が必要。乳幼児や高齢者、免疫不全患者では特に重症化しやすいため、早期介入が重要。抗菌薬の使用はHUSリスクを考慮し、慎重な適応判断が求められる。