多発性囊胞腎
概要
多発性囊胞腎は、両側腎臓に多数の囊胞が形成される遺伝性疾患であり、進行性の腎機能障害を特徴とする。主に常染色体優性遺伝形式(ADPKD)が多く、成人発症型が主流である。腎以外の臓器にも囊胞や合併症を伴うことがある。
要点
- 両側腎に多数の囊胞を形成し、腎腫大や腎機能低下をきたす
- 常染色体優性遺伝(ADPKD)が多く、家族歴が重要
- 肝囊胞や脳動脈瘤など腎外合併症も認められる
病態・原因
常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)はPKD1またはPKD2遺伝子変異による細胞間接着やシグナル異常により、腎実質内に多数の囊胞が発生・増大する。囊胞の増大に伴い腎実質が圧排・破壊され、徐々に腎機能障害が進行する。
主症状・身体所見
腰背部痛、腹部膨満感、血尿、高血圧が主症状である。腎腫大が触知されることも多く、尿路感染や腎結石の合併もみられる。進行例では慢性腎不全症状が出現する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 腹部超音波 | 両側腎に多数の囊胞を認める | 家族歴と併せて診断の中心 |
| CT/MRI | 腎囊胞の数・大きさ・腎腫大の評価 | 肝囊胞や腎外病変も検索可 |
| 尿検査 | 血尿、蛋白尿、尿路感染の所見 | 感染・合併症の評価 |
診断は画像検査(超音波、CT、MRI)で両側腎に多数の囊胞を確認し、家族歴や遺伝子検査で確定する。腎外囊胞(肝囊胞など)や脳動脈瘤の検索も重要である。
治療
- 第一選択:対症療法(血圧管理、感染治療)、進行例では腎代替療法(透析・腎移植)
- 補助療法:食事療法(塩分・蛋白制限)、水分摂取指導、痛みや感染の管理
- 注意点:脳動脈瘤など腎外合併症の定期的スクリーニング、家族への遺伝カウンセリング
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 腎囊胞 | 単発性・孤立性囊胞、腎腫大なし | 囊胞の数・分布が限局的 |
| 多囊胞化萎縮腎 | 腎萎縮、尿細管性障害 | 腎が小さく囊胞は小型多数 |
| Alport症候群 | 感音性難聴・血尿・家族歴 | 囊胞形成は伴わない |
補足事項
バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)が囊胞増大抑制薬として一部適応となっている。腎外合併症(肝囊胞、脳動脈瘤、心弁膜症)にも注意が必要である。