クリプトスポリジウム症
概要
クリプトスポリジウム症は、原虫クリプトスポリジウム属による腸管感染症で、主に水や食品を介して経口感染する。免疫不全者では重症化しやすく、難治性の下痢を呈することが特徴である。
要点
- 水系感染症として集団発生の原因となる
- 健常者では自然治癒することが多いが、免疫不全者では重症化
- 治療薬は限られ、支持療法が中心となる
病態・原因
クリプトスポリジウム属原虫のオーシストが経口摂取され、小腸上皮細胞に寄生・増殖することで発症する。飲料水やプールなどの水、食品、ヒトや動物との接触が主な感染源である。免疫抑制状態や乳幼児で重症化しやすい。
主症状・身体所見
主症状は水様性下痢で、腹痛、悪心、嘔吐、発熱を伴うこともある。特に免疫不全患者では脱水や体重減少、持続性下痢が問題となる。健常成人では軽症から中等症で経過することが多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 便検査(染色法) | オーシストの検出 | 酸抗染色で赤色に染まる |
| 便PCR | クリプトスポリジウムDNA検出 | 高感度・高特異度 |
| 便抗原検査 | 抗原陽性 | 迅速診断が可能 |
便中オーシストの検出が確定診断となる。免疫クロマト法やPCRなど分子生物学的検査も診断に有用。画像検査は通常不要だが、重症例での合併症評価には有用な場合がある。
治療
- 第一選択:ニタゾキサニド(日本未承認)、免疫不全例では抗HIV療法も考慮
- 補助療法:輸液・電解質補正、栄養管理
- 注意点:免疫不全患者では治療抵抗性となりやすい
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| アメーバ赤痢 | 血便・膿粘血便、肝膿瘍合併 | 便中赤痢アメーバの検出 |
| ロタウイルス胃腸炎 | 乳幼児に多く、冬季に流行 | 便中ウイルス抗原陽性 |
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬使用歴、重度の下痢・腹痛 | 便中クロストリジウム・ディフィシル毒素検出 |
補足事項
水道水消毒に対する耐性が高く、塩素消毒では不十分な場合がある。集団発生時は感染源の特定と水系の管理が重要となる。HIV感染者や免疫抑制患者では慢性化・難治化するため、支持療法とともに基礎疾患の管理も重要。