WDHA症候群
概要
WDHA症候群は、水様性下痢(Watery Diarrhea)、低カリウム血症(Hypokalemia)、無胃酸症(Achlorhydria)を特徴とする症候群であり、主に膵臓のVIP産生腫瘍(VIPoma)によって引き起こされる。まれな疾患であり、消化管ホルモン異常症の一つである。
要点
- 膵臓のVIPomaが主な原因
- 水様性下痢と電解質異常が顕著
- 悪性腫瘍であることが多い
病態・原因
膵臓の神経内分泌腫瘍(VIPoma)が過剰に血管作動性腸管ペプチド(VIP)を分泌することで、腸管分泌亢進と電解質喪失をもたらす。発症には腫瘍性病変が関与し、稀に副腎や肺など膵外発生もみられる。
主症状・身体所見
激しい水様性下痢が持続し、脱水や体重減少が進行する。低カリウム血症による筋力低下や不整脈、無胃酸症による消化不良もみられる。重症例では意識障害やショックに至ることもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中VIP測定 | 著明な高値 | 診断の決め手となる |
| 血液生化学 | 低カリウム血症・代謝性アシドーシス | 脱水・電解質異常を反映 |
| 上腹部CT/MRI | 膵腫瘍の描出 | 腫瘍局在診断に有用 |
血中VIP値が明らかに高値であり、典型的な臨床三徴(水様性下痢・低カリウム血症・無胃酸症)が揃えば診断する。画像検査で膵腫瘍を確認することが重要。
治療
- 第一選択:腫瘍切除術
- 補助療法:ソマトスタチンアナログ投与、輸液・電解質補正
- 注意点:再発や転移に注意し、定期的な画像・血液モニタリングが必要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Zollinger-Ellison症候群 | 胃酸分泌亢進・消化性潰瘍 | 血中ガストリン高値、VIP正常 |
| インスリノーマ | 低血糖発作が主体 | 血中インスリン高値、VIP正常 |
| 慢性下痢症 | 症状が緩徐、腫瘍性変化なし | VIP正常、画像所見陰性 |
補足事項
WDHA症候群は多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)に合併することがあり、家族歴や他の内分泌腫瘍の有無も確認する。ソマトスタチンアナログは症状のコントロールに有効。