インスリノーマ
概要
インスリノーマは膵臓のランゲルハンス島β細胞から発生する機能性神経内分泌腫瘍で、インスリンを自律的に過剰分泌する。成人における膵内分泌腫瘍で最も頻度が高く、大部分は良性だが低血糖発作を繰り返す。多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)との関連も知られる。
要点
- インスリン過剰分泌による低血糖発作が主症状
- 多くは単発・良性だが、悪性例や多発例も存在
- 診断には低血糖時の血中インスリン測定と画像検査が重要
病態・原因
インスリノーマは膵臓のβ細胞由来の腫瘍で、インスリン分泌が自律的に制御不能となる。多くは孤立性・良性だが、10%前後で悪性例や多発例も見られる。MEN1との合併が約10%に認められる。
主症状・身体所見
空腹時や運動後に発症する意識障害、けいれん、発汗、動悸などの低血糖症状が特徴。低血糖発作時に糖分摂取で速やかに改善する(Whippleの3徴)。慢性化すると精神症状や神経障害が出現する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖・インスリン | 低血糖時にインスリン高値 | Cペプチドも高値 |
| 画像検査(CT/MRI/EUS) | 膵内の小腫瘍(1-2cm前後)が多い | EUS(内視鏡的超音波)が高感度 |
| 72時間絶食試験 | 低血糖発作の誘発とインスリン値の確認 | 診断のゴールドスタンダード |
低血糖発作時にインスリン・Cペプチド・プロインスリンの不適切高値を確認する。画像検査では膵内の小さな腫瘍の検出が重要で、EUSや選択的動脈内カルシウム注入試験も補助的に用いる。
治療
- 第一選択:腫瘍の外科的切除
- 補助療法:ジアゾキシドやサンドスタチンによる薬物療法
- 注意点:低血糖発作時の迅速な対応と再発・多発例の定期的フォロー
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| インスリン自己免疫症候群 | インスリン自己抗体陽性、高齢・薬剤歴 | 抗インスリン抗体陽性 |
| 低血糖症(非腫瘍性) | インスリン分泌異常なし、基礎疾患あり | インスリン・Cペプチド低値 |
| グルカゴノーマ | 皮膚症状(壊死性遊走性紅斑)・高血糖 | グルカゴン高値、低血糖なし |
補足事項
悪性例や再発例では定位放射線療法や分子標的薬の適応も検討される。MEN1患者では他の内分泌腫瘍のスクリーニングも重要である。インスリノーマは稀だが治療により予後は良好なことが多い。