Larrey孔ヘルニア
概要
Larrey孔ヘルニアは、横隔膜の前内側部(Larrey孔、またはMorgagni孔)を通じて腹腔内臓器が胸腔内へ逸脱する先天性または後天性の横隔膜ヘルニアである。小児のみならず成人にも発症しうるが、比較的稀な疾患である。
要点
- 横隔膜前内側部(Larrey孔)を通じて発生する横隔膜ヘルニア
- 無症状から消化器症状、呼吸器症状まで多彩な臨床像を示す
- 画像診断と外科的治療が診断・治療の中心となる
病態・原因
Larrey孔ヘルニアは横隔膜の前内側部の発生異常や脆弱化が主な原因であり、先天性と後天性の両方が存在する。腹腔内圧の上昇や外傷、加齢による筋力低下なども発症に関与する。
主症状・身体所見
多くは無症状だが、腹部膨満感、嘔吐、呼吸困難、胸痛などを呈することがある。腸管嵌頓や絞扼を来すと急性腹症様の症状となる場合がある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部・腹部X線 | 横隔膜の前内側にガス像や腸管像、陰影を認める | 胸腔内の異常陰影や腸管ガス像が特徴的 |
| CT/MRI | 横隔膜前内側部の欠損と臓器逸脱を明瞭に描出 | 臓器の種類や嵌頓・絞扼の有無も評価可能 |
| 超音波検査(小児例等) | 横隔膜欠損部と逸脱臓器を描出 | 被曝回避目的や胎児診断に用いることもある |
診断は画像検査による横隔膜前内側部の欠損と臓器逸脱の確認により行う。CTが最も有用で、嵌頓や合併症の評価も可能である。
治療
- 第一選択:外科的修復術(ヘルニア門閉鎖+逸脱臓器還納)
- 補助療法:支持療法(呼吸管理・栄養管理・感染対策等)
- 注意点:嵌頓や絞扼の際は緊急手術適応、再発予防のためしっかりとした修復が必要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Bochdalek孔ヘルニア | 横隔膜後外側部ヘルニアで新生児に多い | 欠損部位が後外側、CT像で明確 |
| 食道裂孔ヘルニア | 食道裂孔部を通る、胃の胸腔内逸脱 | 胸部X線・内視鏡で食道裂孔部の逸脱 |
| Morgagni孔ヘルニア | Larrey孔と同義だが右側が多い | 右側発生が多く、画像で部位を確認 |
補足事項
Larrey孔ヘルニアはMorgagni孔ヘルニアとほぼ同義であるが、Larrey孔は左側、Morgagni孔は右側を指すことが多い。成人例では無症状で偶然発見されることも多い。