Douglas窩膿瘍
概要
Douglas窩膿瘍は直腸と子宮(または膀胱)との間にあるDouglas窩に膿が貯留した状態を指す。骨盤内感染症の一つであり、婦人科疾患や消化管穿孔などに続発することが多い。急性腹症の原因となり、迅速な診断と治療が重要である。
要点
- 骨盤内に膿瘍が形成される感染症
- 婦人科・消化器疾患の合併症として発症
- 画像診断と膿瘍ドレナージが治療の中心
病態・原因
Douglas窩膿瘍は、骨盤腔最下部であるDouglas窩に細菌感染が波及し、膿が限局的に貯留することで発症する。原因としては、婦人科手術後や骨盤内臓器の穿孔、骨盤腹膜炎、骨盤内炎症性疾患(PID)などが挙げられる。リスク因子には既往感染や免疫低下状態がある。
主症状・身体所見
発熱、下腹部痛、直腸・膣部の圧痛や腫瘤触知が主症状である。しばしば排便・排尿障害や悪寒、全身倦怠感も伴う。直腸診や婦人科診で膿瘍の圧痛・腫瘤を認めることがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 骨盤超音波 | Douglas窩に低エコー域を認める | 膿瘍の位置・大きさを評価 |
| CT/MRI | 骨盤底に嚢胞状・液体貯留像 | 周囲臓器への波及評価 |
| 血液検査 | 白血球増多、CRP高値 | 炎症反応の指標 |
超音波やCTでDouglas窩の液体貯留や被膜形成を確認し診断する。直腸診や膣診も有用。婦人科疾患や消化管穿孔との鑑別が重要である。
治療
- 第一選択:抗菌薬投与および経膣・経直腸的ドレナージ
- 補助療法:全身管理、輸液、鎮痛
- 注意点:膿瘍破裂や敗血症への進展に注意し、外科的介入も検討
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 骨盤腹膜炎 | 広範な骨盤内炎症、膿瘍形成なし | 画像で液体貯留がびまん性 |
| 卵巣膿瘍 | 付属器領域の腫瘤・圧痛 | 超音波で卵巣腫大を認める |
| 腸管穿孔 | 急激な腹痛・腹膜刺激症状 | 遊離ガス像、腹膜炎所見 |
補足事項
Douglas窩膿瘍は婦人科疾患や消化器疾患の術後・合併症として発症することが多く、早期発見と適切なドレナージが予後を左右する。抗菌薬選択やドレナージ法の進歩により治療成績は向上している。