Crow-Fukase症候群
概要
Crow-Fukase症候群は、末梢神経障害を主徴とし、多発性骨硬化症や内分泌異常、皮膚症状、臓器腫大など多彩な全身症状を呈する稀な疾患である。POEMS症候群とも呼ばれ、血中M蛋白や血管内皮増殖因子(VEGF)の増加が特徴的である。主に中年以降の男性に発症し、進行性の経過をたどる。
要点
- 末梢神経障害に加え、多臓器障害やM蛋白血症を伴う
- 血管内皮増殖因子(VEGF)の上昇が診断・病態の鍵
- 造血器腫瘍との関連が強く、治療は基礎疾患の制御が中心
病態・原因
骨髄系細胞の異常によりM蛋白(主にIgGまたはIgA)が産生され、VEGFの過剰分泌やサイトカイン異常が全身症状を引き起こす。発症には免疫異常や慢性炎症も関与し、しばしば多発性骨硬化や腫瘍性病変がみられる。
主症状・身体所見
進行性の四肢末梢神経障害(感覚・運動障害)、骨硬化や骨痛、臓器腫大(肝脾腫・リンパ節腫脹)、皮膚色素沈着、浮腫、内分泌異常(糖尿病・性腺機能低下)などがみられる。しばしば乳頭浮腫や多毛も認められる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清蛋白電気泳動 | M蛋白(IgGまたはIgA)上昇 | 単クローン性免疫グロブリン検出 |
| 血中VEGF | 著明な高値 | 診断・重症度判定に有用 |
| 神経伝導検査 | 多発ニューロパチー | 運動・感覚神経ともに障害 |
| 骨X線・MRI | 骨硬化像 | 多発性骨硬化病変を確認 |
診断は、末梢神経障害、多発性骨硬化、M蛋白血症、臓器腫大、内分泌異常、皮膚症状のうち複数の存在およびVEGF高値で総合的に判断する。骨画像では硬化性病変、神経伝導検査で軸索障害型多発ニューロパチーが特徴的。
治療
- 第一選択:基礎疾患(造血器腫瘍)への化学療法や自家末梢血幹細胞移植
- 補助療法:プレドニゾロンやIVIG、理学療法・支持療法
- 注意点:感染症や血栓症の予防、内分泌異常の管理
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 多発性骨髄腫 | 末梢神経障害が少なく、骨融解性病変主体 | M蛋白陽性だがVEGFは上昇しない |
| 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー | 骨硬化やM蛋白血症なし | 免疫グロブリン異常やVEGF高値なし |
| アミロイドーシス | 末梢神経障害+臓器障害だが骨硬化なし | アミロイド沈着の証明が必要 |
補足事項
POEMS症候群(Polyneuropathy, Organomegaly, Endocrinopathy, M protein, Skin changes)の頭文字を取った呼称も広く使用される。VEGF測定や骨硬化像の認識など、近年診断基準がアップデートされている。