鼠咬症
概要
鼠咬症は、ネズミに咬まれることで感染する人獣共通感染症であり、主にStreptobacillus moniliformisまたはSpirillum minusによって引き起こされる。発熱や発疹、関節炎などの全身症状を呈し、適切な抗菌薬治療が必要となる疾患である。
要点
- ネズミ咬傷後に発熱・発疹・関節炎を呈する
- 原因菌はStreptobacillus moniliformisまたはSpirillum minus
- 抗菌薬治療が有効であり、早期診断が重要
病態・原因
ネズミに咬まれることで、口腔内に常在するStreptobacillus moniliformisやSpirillum minusが体内に侵入し、血行性に全身へ波及する。咬傷歴やネズミとの接触歴がリスク因子となる。
主症状・身体所見
発熱、悪寒、発疹(多くは四肢・体幹の紫斑状発疹)、関節痛・関節炎が特徴的で、咬傷部位の潰瘍やリンパ節腫脹もみられることがある。咬傷部は軽微なことも多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液培養 | Streptobacillus属またはSpirillum属検出 | 培養には特殊な環境が必要 |
| 末梢血液検査 | 白血球増多、CRP上昇 | 感染症としての炎症反応を示す |
| 病原体同定 | 菌の同定(PCRや染色) | 特異的な菌種の証明が重要 |
血液培養や咬傷部の分泌物からの病原体検出が診断の決め手となる。臨床的にはネズミ咬傷歴と特徴的な症状の組み合わせで疑う。画像診断は関節炎の評価で用いることがある。
治療
- 第一選択:ペニシリン系抗菌薬(アモキシシリン等)投与
- 補助療法:解熱鎮痛薬、関節炎への対症療法
- 注意点:ペニシリンアレルギー時はテトラサイクリン系などを選択
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| ねこひっかき病 | ネコとの接触歴、皮膚の丘疹・膿瘍 | Bartonella henselae検出 |
| 壊死性筋膜炎 | 急激な進行、強い疼痛、皮膚壊死 | 画像・培養で複数菌種、重症化しやすい |
補足事項
日本では稀な疾患だが、都市部や衛生状態の悪い環境で発生することがある。予防にはネズミの駆除や咬傷時の適切な消毒が重要。重症化すると敗血症や多臓器不全を来すことがある。