重症急性呼吸器症候群
概要
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、コロナウイルス科に属するSARSコロナウイルス(SARS-CoV)によって引き起こされる急性の重篤な呼吸器感染症。2002〜2003年に世界的流行を起こし、高い致死率と感染力が特徴である。主に飛沫感染や接触感染を介して伝播する。
要点
- SARSコロナウイルスによる重篤なウイルス性肺炎
- 急性呼吸不全や多臓器障害を合併しやすい
- 特異的治療法はなく、主に支持療法が中心
病態・原因
SARSは新規のコロナウイルス(SARS-CoV)のヒトへの感染により発症する。主な感染経路は飛沫感染や接触感染であり、ウイルスは主に気道上皮細胞に感染し、炎症反応やサイトカインストームを引き起こす。
主症状・身体所見
発熱、咳嗽、呼吸困難が典型的な症状で、全身倦怠感や筋肉痛も多い。重症例では低酸素血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全を呈することがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線/CT | 両側性すりガラス影、浸潤影 | 早期は限局性、進行でびまん性 |
| PCR検査 | SARS-CoV遺伝子検出 | 咽頭・鼻腔・喀痰などから採取 |
| 血液検査 | リンパ球減少、CRP上昇 | 肝酵素上昇やLDH上昇も |
診断は臨床症状と疫学的接触歴、PCRによるウイルス遺伝子検出を組み合わせて行う。画像では両側性の肺炎像が特徴的。
治療
- 第一選択:対症的支持療法(酸素投与、補液管理)
- 補助療法:機械的換気管理、二次感染対策
- 注意点:感染隔離の徹底、医療従事者の感染防御
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 新型コロナウイルス感染症 | SARS-CoV-2による、嗅覚・味覚障害が多い | PCRでウイルス型鑑別 |
| インフルエンザウイルス感染症 | 上気道症状が中心、季節性流行 | インフルエンザ迅速検査陽性 |
| 肺炎球菌性肺炎 | 突然の高熱と膿性痰 | 喀痰培養で細菌検出 |
補足事項
SARSは2003年以降ヒトでの大規模流行は報告されていないが、コロナウイルス感染症の重篤例として歴史的意義が大きい。治療薬やワクチンは開発途上であり、感染対策が最も重要となる。