遺伝性非ポリポーシス大腸癌

概要

遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC、リンチ症候群)は、DNAミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異によって発症する家族性大腸癌である。大腸癌以外に子宮体癌や胃癌など他臓器発癌リスクも高い。若年発症や右側結腸癌の頻度が高いのが特徴。

要点

  • DNAミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異が主因
  • 大腸癌以外にも多臓器発癌リスクが高い
  • 若年発症・右側結腸癌の頻度が高い

病態・原因

MLH1、MSH2、MSH6、PMS2などDNAミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異により、DNA修復機能の低下が起こる。これによりマイクロサテライト不安定性(MSI)が生じ、腫瘍抑制遺伝子の変異蓄積が進み発癌リスクが増大する。常染色体優性遺伝形式をとる。

主症状・身体所見

無症状のことも多いが、若年での大腸癌発症が特徴的で、右側結腸癌が多い。家族歴のある患者や、子宮体癌・胃癌など他臓器の悪性腫瘍を合併することがある。大腸癌の症状としては血便、腹痛、体重減少などがみられる。

検査・診断

検査所見補足
大腸内視鏡検査多発性・右側大腸癌若年発症や多発病変に注意
遺伝子検査MMR遺伝子変異の同定MLH1,MSH2,MSH6,PMS2など
MSI検査マイクロサテライト不安定性腫瘍組織で評価

アムステルダム基準やベセスダガイドラインに基づき家族歴や臨床像から疑い、MSI検査や免疫染色、遺伝子解析で確定診断を行う。画像検査では大腸癌以外の臓器腫瘍のスクリーニングも重要。

治療

  • 第一選択:外科的切除(癌病変に対して)
  • 補助療法:定期的な大腸内視鏡・他臓器スクリーニング
  • 注意点:遺伝カウンセリング、家族へのサーベイランス推奨

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
家族性腺腫性ポリポーシス多発ポリープと若年発症APC遺伝子変異、ポリポーシス
潰瘍性大腸炎関連大腸癌炎症性腸疾患の既往粘膜変化・炎症所見
結腸癌(散発性)高齢発症が多い家族歴・遺伝子異常なし

補足事項

HNPCC患者では子宮体癌や胃癌、卵巣癌、尿路系癌などの発症リスクも高いため、臓器横断的なサーベイランスが推奨される。免疫染色によるMMR蛋白の発現評価も重要である。

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