輸血感染症
概要
輸血感染症は、輸血によって患者に病原体が伝播する疾患群を指す。主な原因はウイルスや細菌、寄生虫などの病原体であり、B型・C型肝炎ウイルスやHIVなどが代表的である。輸血の安全性向上にもかかわらず、完全なリスク排除は困難である。
要点
- 輸血によりウイルス・細菌・寄生虫感染のリスクがある
- 近年はNATなどの検査強化で発生頻度は大幅に減少
- 残存リスクとして新興病原体やウィンドウ期感染が課題
病態・原因
輸血感染症は、血液製剤中に含まれる病原体が受血者に感染することで発症する。主な原因はB型・C型肝炎ウイルス、HIV、HTLV-1、パルボウイルスB19などのウイルス、細菌、マラリアやトリパノソーマなどの寄生虫である。ドナーの感染やウィンドウ期(感染初期で検出困難な期間)がリスク要因となる。
主症状・身体所見
感染症の種類によって症状は多彩で、無症状から急性肝炎、発熱、全身倦怠感、黄疸、免疫不全症状まで幅広い。慢性化する場合も多く、C型肝炎やHIV感染では長期的な健康障害を引き起こすことがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| ウイルスマーカー検査 | HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体など | 血液製剤・受血者双方で実施 |
| NAT(核酸増幅検査) | ウイルス遺伝子検出 | ウィンドウ期短縮に有用 |
| 血液培養 | 細菌感染の有無 | 発熱時などに施行 |
輸血前後のウイルスマーカー(HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体など)の測定やNATによるウイルス遺伝子検出が重要である。輸血後に発熱や肝機能障害を認めた場合は、感染症の鑑別として血液培養や追加のウイルス検査を行う。診断は輸血歴と検査所見の組み合わせで行う。
治療
- 第一選択:原因病原体に応じた抗ウイルス薬・抗菌薬・抗寄生虫薬
- 補助療法:対症療法、肝保護、支持療法
- 注意点:感染症の早期発見と報告、二次感染予防
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 不適合輸血 | 溶血反応・発熱・血尿が主体 | 直接クームス試験陽性 |
| 日和見感染症 | 免疫不全患者で発症、輸血歴ない場合も | 免疫能・基礎疾患の評価 |
| 敗血症 | 急性発熱・ショック・多臓器不全 | 血液培養陽性、菌血症の証明 |
補足事項
国内外で輸血感染症のリスクは年々低下しているが、未知の新興感染症やウィンドウ期感染のリスクは依然として残る。高リスク患者や免疫不全患者では特に注意が必要で、輸血後は感染症発症の有無を慎重に経過観察する。