腸チフス・パラチフス
概要
腸チフス・パラチフスはサルモネラ属細菌(主にS. TyphiおよびS. Paratyphi)による全身性の感染症で、経口感染により発症する。発熱、バラ疹、脾腫、比較的徐脈などを特徴とし、衛生環境の悪い地域で流行する。重症例では消化管穿孔や出血などの合併症を生じることがある。
要点
- サルモネラ属菌による全身性感染症
- 高熱、バラ疹、比較的徐脈が特徴
- 消化管穿孔・出血など重篤な合併症に注意
病態・原因
腸チフスはSalmonella enterica serovar Typhi、パラチフスはS. Paratyphi A・B・Cによって引き起こされる。汚染された水や食物の経口摂取が主な感染経路であり、腸管からリンパ組織を経て全身に波及する。発展途上国や衛生環境の悪い地域で流行しやすい。
主症状・身体所見
持続的な高熱、バラ疹(体幹部に出現する淡紅色の発疹)、脾腫、比較的徐脈(Faget徴候)が特徴的である。頭痛、全身倦怠感、便秘や下痢もみられる。重症例では意識障害や消化管穿孔・出血をきたすことがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液培養 | サルモネラ属菌の検出 | 発症初期が最も陽性率高い |
| 便・尿培養 | サルモネラ属菌の検出 | 発症2週目以降で陽性率上昇 |
| 血液検査 | 白血球減少、肝機能異常、CRP上昇 | 非特異的所見 |
診断は血液培養による病原菌の検出が確定的で、便・尿培養は補助的。血清抗体検査(Widal反応)は特異度が低く補助診断に留まる。腹部画像で腸管穿孔や出血の評価を行うこともある。
治療
- 第一選択:ニューキノロン系または第3世代セフェム系抗菌薬
- 補助療法:輸液、解熱薬、栄養管理、重症例では外科的治療
- 注意点:耐性菌の増加に注意し、再発予防のため治療期間を遵守
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 感染性腸炎 | 高熱よりも下痢・腹痛が主症状 | 血液培養陰性、便培養で他菌検出 |
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬使用歴、粘血便、腹痛 | 便中にClostridioides difficile毒素 |
| 腸結核 | 慢性経過、夜間発熱、体重減少 | 結核菌検出、PCR陽性 |
補足事項
近年、多剤耐性サルモネラの出現が問題となっており、抗菌薬選択には地域の耐性状況を考慮する必要がある。ワクチン接種による予防も重要である。