腎外傷
概要
腎外傷は腎臓に加わる外力(交通事故や転落、打撲など)によって発生する腎実質や腎血管の損傷を指す。泌尿器系外傷の中で最も頻度が高く、重症例では生命予後に直結することがある。診断・治療には損傷度の評価と全身管理が重要となる。
要点
- 腎外傷は腹部外傷の中でも頻度が高い
- 画像検査による損傷度評価が治療方針決定に必須
- 保存的治療が主体だが、重症例では手術やIVRが必要
病態・原因
腎外傷は主に鈍的外力(交通事故や高所からの転落、スポーツ外傷など)によって発生し、まれに刺創や銃創などの鋭的外力でも認められる。腎臓は後腹膜臓器であり、肋骨や筋肉によりある程度保護されているが、強い衝撃や圧迫により損傷を受けることがある。
主症状・身体所見
肉眼的または顕微鏡的血尿が最も頻度の高い症状であり、腰背部痛や圧痛、腫脹、腹部膨満、ショック症状を呈することもある。血尿の有無と損傷の重症度は必ずしも一致しない。重症例では腹膜刺激症状や全身状態の悪化がみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 腹部造影CT | 腎実質損傷、血腫、尿漏など | 損傷度分類・治療方針決定に有用 |
| 尿検査 | 血尿の有無 | 血尿の程度は重症度と一致しない |
| 腹部超音波検査 | 血腫、尿漏、腎形態異常 | 初期スクリーニングに有用 |
腎外傷の診断には造影CTが最も有用であり、損傷度(AAST分類)に基づき治療方針を決定する。重症例や全身状態不良時は緊急手術やIVRの適応となる。超音波検査は初期評価や経過観察に用いられる。
治療
- 第一選択:保存的治療(安静、輸液、経過観察)
- 補助療法:止血剤投与、抗菌薬投与、疼痛管理
- 注意点:大量出血や尿漏、血行動態不安定例は手術・IVRを検討
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 腎盂腎炎 | 発熱・膿尿・感染徴候が主体 | 尿培養陽性、CTで腫大 |
| 腎結石 | 疼痛発作・血尿・結石既往 | CTで結石を確認 |
| 脾破裂 | 左上腹部痛、ショック症状 | CTで脾損傷・血腫 |
補足事項
腎外傷の多くは保存的治療で予後良好だが、重症例や合併損傷例では生命予後に影響するため早期診断・適切な治療が重要である。小児や単腎患者では特に慎重な対応が求められる。