脊髄癆

概要

脊髄癆は梅毒の第三期(晩期)に発症する神経梅毒の一型で、主に後索・後根に慢性進行性の変性病変をきたす。深部感覚障害や歩行障害、排尿障害など多彩な神経症状を呈する。現代では早期治療により発症頻度は減少している。

要点

  • 梅毒感染の慢性経過で発症する神経障害
  • 深部感覚障害と感覚性運動失調が特徴
  • 早期の抗菌薬治療が重要

病態・原因

梅毒トレポネーマの感染が長期間持続し、主に脊髄後索と後根に慢性炎症・変性を引き起こすことで発症する。リスク因子は未治療または治療不十分な梅毒感染であり、発症は感染から10~20年以上経過後にみられる。

主症状・身体所見

深部感覚障害による歩行障害(感覚性運動失調)、アレフレキシア、雷撃痛(発作性の激しい疼痛)、膀胱直腸障害、Argyll Robertson瞳孔(対光反射消失・近見反応保たれる)が特徴的である。

検査・診断

検査所見補足
血清梅毒検査TPHA・RPR陽性梅毒感染の証明
髄液検査髄液中梅毒抗体陽性、蛋白増加、細胞増多神経梅毒の診断に必須、髄液RPR・TPHAも参考
MRI脊髄後索の高信号変化画像所見は非特異的だが、進行例で萎縮や変性を認める

診断は臨床症状と梅毒血清反応陽性、髄液所見、画像診断を組み合わせて行う。Argyll Robertson瞳孔は診断的価値が高い。鑑別にはビタミンB12欠乏症や他の脊髄疾患も考慮する。

治療

  • 第一選択:ペニシリン系抗菌薬の大量・長期投与
  • 補助療法:対症療法(鎮痛薬、リハビリテーション、膀胱管理)
  • 注意点:治療開始後のJarisch-Herxheimer反応、早期治療の重要性

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
亜急性脊髄連合変性症ビタミンB12欠乏、貧血・精神症状合併血清ビタミンB12低下
多発性硬化症若年発症・再発寛解・視神経障害髄液オリゴクローナルバンド陽性
脊髄腫瘍進行性単側性障害、圧迫症状MRIで腫瘍性病変を認める

補足事項

梅毒の適切な治療により発症は激減したが、未治療例や高齢者で稀にみられる。進行例では不可逆的な神経障害を残すため、早期発見と治療が重要である。

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