肝損傷
概要
肝損傷は外傷によって肝臓が損傷し、出血や肝機能障害をきたす状態である。交通事故や高所転落、鈍的腹部外傷が主な原因で、急性腹症やショックを呈することが多い。重症度によって保存的治療から外科的止血まで対応が異なる。
要点
- 鈍的腹部外傷で頻度が高い実質臓器損傷
- 出血性ショックや腹腔内出血のリスクが高い
- 画像診断と重症度評価が治療方針決定に重要
病態・原因
主に交通事故や転落、暴力などによる鈍的腹部外傷が原因となる。肝臓は右季肋部に位置し血流が豊富なため、損傷時には大量出血をきたしやすい。肝包膜下血腫、実質裂傷、肝静脈や門脈損傷など損傷部位により重症度が異なる。
主症状・身体所見
右季肋部痛や圧痛、腹部膨満、腹膜刺激症状がみられる。重症例ではショック(意識障害、頻脈、低血圧)、腹腔内出血による循環不全が出現することがある。皮下出血や肋骨骨折を伴うこともある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 腹部超音波(FAST) | 腹腔内液貯留 | 緊急時の出血評価に有用 |
| 腹部CT | 肝実質損傷、血腫、造影剤漏出 | 重症度分類・治療方針決定に必須 |
| 血液検査 | Hb低下、肝酵素上昇 | 出血量や肝障害の評価 |
腹部CTは肝損傷の重症度分類(AAST分類)に用いられ、造影剤漏出は活動性出血を示す。FASTはベッドサイドでの迅速評価に適する。血液検査では貧血や肝逸脱酵素の上昇が参考となる。
治療
- 第一選択:循環動態安定例は保存的治療(安静、輸液、輸血)
- 補助療法:TAE(動脈塞栓術)や外科的止血(損傷縫合、肝切除)
- 注意点:ショック例や活動性出血例では早期外科的介入が必要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 脾破裂 | 左季肋部痛・腹腔内出血 | CTで脾臓損傷像 |
| 腎外傷 | 腰背部痛・血尿 | CTで腎損傷・尿路血腫 |
補足事項
小児や高齢者では症状が乏しいことがあり、慎重な経過観察が重要となる。保存的治療例でも遅発性出血や胆汁漏などの合併症に注意する。