甲状腺悪性リンパ腫
概要
甲状腺悪性リンパ腫は甲状腺に発生する稀な悪性腫瘍で、多くは高齢女性に発症し、急速な甲状腺腫大や圧迫症状を呈する。主に非ホジキンリンパ腫のB細胞系が多く、慢性甲状腺炎(橋本病)との関連が指摘されている。
要点
- 急速な甲状腺腫大と圧迫症状が特徴
- 慢性甲状腺炎を基盤とすることが多い
- 予後は組織型と進行度により異なる
病態・原因
甲状腺悪性リンパ腫は、主にB細胞由来の非ホジキンリンパ腫であり、慢性甲状腺炎(橋本病)を基盤として発症することが多い。自己免疫性炎症によるリンパ球浸潤が腫瘍化のリスクを高める。
主症状・身体所見
急速に増大する無痛性の甲状腺腫大が特徴で、頸部圧迫感や嚥下困難、嗄声、呼吸困難などの圧迫症状がみられる。全身症状(発熱、体重減少など)はまれだが、進行例では認められることがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 超音波検査 | 低エコーの腫瘤、境界不明瞭 | 甲状腺全体の腫大も多い |
| 生検(針生検) | リンパ球増殖像、B細胞マーカー陽性 | 組織診断が確定に必須 |
| CT/MRI | 甲状腺腫瘤の範囲・周囲浸潤の評価 | 気道・食道圧迫の有無確認 |
確定診断には組織生検が必要であり、免疫染色によるB細胞マーカー(CD20など)の陽性が診断の決め手となる。画像検査は進展度や周囲臓器への圧迫・浸潤評価に用いる。
治療
- 第一選択:化学療法(CHOP療法など)±放射線療法
- 補助療法:気道狭窄時のステロイド投与や気道確保
- 注意点:橋本病合併例では甲状腺機能管理も重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 未分化癌 | 極めて急速な進行、疼痛・皮膚浸潤 | 細胞診で多形性・異型細胞多い |
| 橋本病 | ゆっくり進行、圧迫症状は稀 | 自己抗体陽性、腫瘍性変化なし |
補足事項
甲状腺悪性リンパ腫は早期発見・治療で予後が改善するが、進行例では気道圧迫など救急対応が必要になる。橋本病患者の経過観察時には急激な腫大に注意する。