本態性振戦
概要
本態性振戦は、特に原因となる神経疾患が認められないにもかかわらず出現する、手や頭部などのリズミカルな振戦を主徴とする運動障害である。加齢とともに発症頻度が増加し、日常生活動作に支障を来すこともある。遺伝的素因も報告されている。
要点
- 安静時ではなく動作時・姿勢保持時に振戦が増悪
- 本人・家族歴の有無が診断の手がかり
- Parkinson病など他疾患との鑑別が重要
病態・原因
本態性振戦の明確な原因は不明であるが、遺伝的要素や神経伝達物質(特にGABA作動性系)の異常が関与すると考えられている。加齢やストレス、カフェイン摂取などが増悪因子となることが多い。
主症状・身体所見
代表的な症状は手指や前腕のリズミカルな振戦であり、姿勢保持時や動作時に顕著となる。頭部や声帯に振戦が及ぶこともあり、書字やコップを持つ動作など巧緻運動に支障をきたす場合がある。安静時振戦は目立たない。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 神経学的診察 | 姿勢時・動作時振戦 | 他の神経症状は原則認めない |
| 血液検査 | 異常なし | 甲状腺機能亢進症などの除外 |
| 画像検査(MRI) | 特異的所見なし | 構造的異常の除外目的 |
診断は臨床症状と家族歴、他疾患除外により行う。画像所見は原則正常であるが、鑑別目的で頭部MRIを施行することがある。
治療
- 第一選択:β遮断薬(プロプラノロール)、抗てんかん薬(プリミドン)
- 補助療法:リハビリテーション、ストレス回避指導
- 注意点:薬剤の副作用や高齢者への投与量調整、難治例への外科的治療(定位脳手術)
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Parkinson病 | 安静時振戦・動作緩慢・筋強剛 | ドパミン作動薬反応性、MRIで黒質変性 |
| 甲状腺機能亢進症 | 振戦+体重減少・発汗・頻脈 | 甲状腺機能検査異常 |
補足事項
本態性振戦は経過とともに進行することがあるが、生命予後には大きな影響を及ぼさない。近年、遺伝子異常や神経回路異常の研究が進んでいる。